2025年06月
2025年06月21日
Tannoy 12" Red クロスオーバーネットワークのオーバーホール

懇意のお客様からの依頼である。
Tannoy Chatsworth を購入されたそうで、12インチRed付属クロスオーバーネットワークのコンデンサを交換してほしいとおっしゃる。
やりたくはない。
ケースの開け方もわからないから、できませんと断る。
今、別の人にふたを開けてもらっているから、開いたら頼みますとのことである。
「その人に頼んだらいいではないですか」と私。
その人はこれ以上やる気をなくしているそうである。
コンデンサは用意するから、ぜひやってほしいとのことである。
あーあ、面倒な仕事は結局こちとらがやることになる。
送られてきた。
紙とアルミ箔が巻いてある手作りのようなむき出しのコンデンサが、蝋で密封されている。
すばらしい。こんなに良い作りの物をばらしたくない。
それで、お断りのメールを差し上げた。
コンデンサの容量が、倍ほどになっているので、どうしてもやってほしいとのことである。
負けた。
他のお客様の修理の後でなら、やることを約束する。

250μHのコイルさえあれば、新しく作れるのに、と思う。
こんな面倒なことでも、うまくやる自信はあるが、決して高いことを言えないから、やる気にはならないのだ。
まあいい。やると決めたからにはちゃんとしたことをやろう。
方針として、お客様はハンダ付けはできるとのことでしたので、コンデンサを簡単に交換できるようにする。
ベークライトの基盤を作れば、交換は簡単だ。
それで、次のように作った。

これならコンデンサの交換は簡単だ。

15Ωの抵抗は、値は大丈夫だが、リード線がくるくる回って接触不良を起こす可能性があるので、新品に交換した。



音を聴いてもらうために、Vimeoにアップした。
Redスピーカーは、私の手持ちを使う。1本しか無いからモノラルでのテストである。
映写機、プロジェクター付属英国製ボックスに入れている。
GoodmansとTannoyは穴の配置が同じだから、そのまま装着可能である。
Pierre Fournier Vivaldi Concert In E Minor For 'Cello And String Orchestra Tannoy 12" Red Network overhaul
Thanks For The MemorySerge Chaloff Tannoy 12" Red Crossover Network Overhaul
gtkaudio at 01:10|Permalink│Comments(2)
2025年06月03日
Garrard Model-Tの修理依頼

懇意のお客様からDecca Model-Tの修理を依頼された。
何度も修理しているから楽にできると思っていたが、まあ、すったもんだの修理になった。
Decca XMSが直接使用できるレアなロングアームが装着されたタイプのModel-Tである。
この時代のガラードは、精密とは言い難いながらも、精密な機器が出せない魅力のある音を出してくれる。
さて今回の修理だが、お客様と私の間で、2往復した上にさらに問題が起こるという通常ない事態になり、完成までに2週間ほどかかってしまった。
最初の修理である。


前に修理してあった。
モーターを支えるゴムは新品がついている。
しかし、最も大事なものがある。
モーターの軸上にあるプーリーから2個の外側のプーリーにつなぐ2個の小さなゴムベルトがある。
これが最も肝心である。
古くなってダメになっているとうまく回らなくなってしまう。
案の定ダメになっていた。
前に修理した人は、良いベルトを手に入れられなかったらしい。
手持ちのベルトと交換した。
調整と、アームの配線が違っていたので、ハンダをし直した。
RCAピンのついたケーブルが短いそうで、長くしてほしいとのことでした。
ついていたケーブルもよさそうでしたので、スイッチクラフトとNeglexを使い延長ケーブルを作りました。

修理が終わって、お客様に確認していただくため、Vimeoに動画をアップした。
As Time Goes By Eve Boswell Decca Model-T テスト Leak Point One pre-amplifier
なかなかいい音だと思った。
お客様も満足されておられるようなので、お送りした。
第一のつまずき。
お客様のカートリッジでは音が出ないという。
アダプターを使えばガラード401でこのカートリッジ、音が出るという。
さあ大変だ。
カートリッジも私からお買い上げいただいたものである。
私の責任だ。
もう一度、カートリッジも一緒に、送り返していただいた。
カートリッジが刺さる3ピンのソケット位置の問題で、接触不良が起きているのではと思った。
そこを確認してみたが問題ないようだ。
カートリッジを刺した状態で、RCAピンプラグの抵抗を測定する。
なに、0オーム。
ショートしてるじゃん。
わかった。
カートリッジの問題だ。
XMSを使い始めたころ、Garrard RC75で似たようなことが起こった。
カートリッジの3個の接点のうち、通常上2つだけが配線してある。
ものによって、下の接点にも配線されていることがある。
例として挙げているのでハンダ付けはしていないが、下の画像の状態である。

左上と下の接点がつながっている。
ステレオの時代になって、モノラルのXMSでも左右の両方から音が出るように配線してあるのかもしれない。
Model-Tのような古いプレーヤーは、真ん中の接点は、金属のアームとつながっていて、アースされるようになっている。
それゆえ、下の接点には配線されてはいけないのだ。左上と下の接点をつなぐ線を切ればよい。下の画像のようにする。

アダプターでは、下の接点は絶縁されているから大丈夫なのだ。
たまたま、下の接点も配線されている数少ないタイプのカートリッジだったために、ショートして音が出なかったのだ。
さあ、なおった。
お客様のカートリッジで、テストの映像をアップした。
Patti Pages Changing Partners .Decca Model-T XMS テスト Leak Point One pre-amplifier
Patti Pages I went to Your Wedding .Decca Model-T XMS テスト Leak Point One pre-amplifier
このカートリッジは国産のコイルで修理したものです。レコードも国産です。
音はいいと思います。針が良いのです。
Decca XMSは、針が大事だ。
Decca XMSを鳴らすには、この時代のプレーヤーがいい。
何と言っても、情趣を感じさせる音が出る。
この種の芸能芸術に属する音は、精密に性能良く作ったものがより良い音を出すわけではない。
雑音を極小にすれば手に入るものでもない。
そんな技術的なことではない。..
まさにその種の音を聴き分ける能力のある人が、音を聴きながら作り上げたものからのみ得ることができる音なのです。
オーディオは楽器作りと同じようなものと考えています。
ノイズがないとか、測定値が良いとか、それで情趣を感じさせる音が出ると信じるのは、あまりに安易ではないですか。
音は芸能芸術に属するものなのです。
第二のつまずき。
さてと、ちゃんと鳴っているかお客様に電話した。
またもや問題が出たのである。なんてことだ。
スピードが速いとのことだ。
ああ、もしかして50Hz、60Hzの問題か。
しまった。甘く考えていた。
これに関しては解決策があるから購入されたとばかり思っていた。
60Hz用のプーリーがあればいいが、私は英国からばかり買っていたから無理だ。
どうにかしなければならない。
5年ほど前に購入した換気扇用の周波数変換器を使ってみよう。
ただし問題があった。
私のところでは普通に聴けたのだが、当時お貸ししたお客さんのところでは雑音がひどく出たそうである。
うまく鳴るか、試してもらうしかない。

お送りした。
Yahooで見てみたら、1200円で売られているから、これでうまくゆけばそれを購入すればよいと思った。
よく見たら、ネットで売られている周波数変換器は、200V3相がほとんどで、単相100v入力、単相100v出力はほとんどない。
出力は、単相200vでもいい。それでもなかなかない。
私が持っているものは単相100v入力単相100v出力である。5年ぐらい前は簡単に買えたのだが。

ノイズが出た時には、周波数変換器とプレーヤーの間に絶縁トランスを入れるように、同梱した。
結果は周波数変換器だけで事足りたそうである。ノイズは出なかった。
お客様、Garrard 401を常用しておられるのですが、Model-TにXMSで聴く音は別物に感じるとおしゃっていらした。
私も同感です。
Model-TとXMSは良い楽器のようなものなのです。
gtkaudio at 23:27|Permalink│Comments(0)