2023年12月

2023年12月17日

Garrard301のプラッター取り外し

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プラッターを取り外した後のGarrard301のなんてことない写真である。

しかし、これを見て感動する人もいるのである。

懇意のお客様から、プラッターがどうしても取り外せないから送るので取ってほしいとの依頼が来た。

電源スイッチのレバーも折れているので交換してほしいとのことであった。



プラッターが取れないのはちょっと工夫すれば簡単である。

通常はプラッターを引っ張り上げれば、軸から外れる。

時として引っ張り上げただけでは取れないこともある。

そんな時は、軸受けの底蓋にある2個のねじを緩め、底蓋を外せばよい。

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写真中央にあるのが軸受けである。

軸受けの底蓋を外すと、軸は自由になる。

写真は裏側を示しているから、本体をひっくり返し、軸の上から軽くたたいてあげれば、プラッターから軸は簡単に外れる。

底蓋を外すと、本体とプラッターが接触した状態になるので、気になる人は、本体とプラッターの間にタオルを挟んで、軸の頭をたたく際の衝撃で傷つくのを防げばよい。

今までこのやり方で、プラッターは必ず外れた。


しかしながら、送られてきた301のプラッターは外れないのである。

あまり激しくたたくと本体やプラッターを傷つけるので、軸受けを本体から外し、プラッターと軸と軸受けだけにして、かなり強烈に木槌でたたいた。

それでも外れない。

クレ556をつけて一昼夜置いたが外れない。


ここまでくると、接着剤で固着しているとも考えられる。

熱を加えればいいのでは。

半田ごてで温めてみたが、到底熱くならない。

たまたま店にいらしたお客様から、工業用ドライヤーという良い情報を教えてもらった。

かなり熱くすることができるらしい。


依頼されたお客様からは、最悪壊れても仕方がないとの言質はいただいている。

早速、工業用ドライヤーを手に入れ、軸を狙って加熱した。

熱を加えて軸の頭をたたくを繰り返した。

プラッター全体がだいぶ熱くなったころである。

到底無理かとあきらめかけた時、コロッと軸が外れたのである。

熱を加えてようやくとれたのだから、接着剤で固着していたのかもしれない。

そんなことする人がいるとは信じられないが、こんなことは経験したことがないので、あり得るとも思える。


そう、プラッターを外した301の何のことはない写真に感動するのは、私自身である。

そして、たぶん依頼されたお客様も。




テストをした。

お客さんは60Hzの地域にお住まいだから、プーリーが関東の50Hzとは異なる。

周波数変換をしなければならない。

送風機用の周波数変換器を利用した。

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ノイズが発生するかもしれないので、複巻トランスを周波数変換器とターンテーブルの間に入れている。絶縁トランスの役割である。

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さてテストである。

上記、周波数変換器と複巻トランスを使ってテストした。



中島みゆきの曲は、有名な曲でなくても、うまく再生すれば魅力的である。聴いてみてください。

中島みゆき 蕎麦屋 Garrard301 test






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2023年12月05日

SMEスライドベースを利用し、Ortofon AS212をA,G両タイプで使えるようにする


懇意のお客様から、Ortofon AS212とSMEのスライドベースを組み合わせた興味深いトーンアームが送られてきた。

Thorens TD/124のボードに装着されている。

Ortofon SPUのAとGの両タイプで使えるようにしているのだろうと思った。

お客様が購入した時もそのつもりだったらしい。

お客様の要望は、黒いボードではなく、木目のあるボードにすることと、スライドベースをボードに平行ではなくできる限り軸に向かって斜めにつけるということだった。

軸に向かうようにつければ、軸間距離のストロークを稼げる。

職人さんに頼みGTKオーディオで作っているボードは、硬い一枚板にクリア塗装で、色は木の色そのままであるから、木目のあるボードの要望にピッタリである。


さて、調べるところから始める。

ケーブルがない。軸を留めるねじがない。

音出しのテストには、手持ちの部品でどうにかする。

まずは、送られてきたボードでのオーバーハングを調べてみる。

うん?変だ。

タイプGを装着して、オーバーハングを調べると、スライドベースを一番手前にして、約20㎜である。

タイプAでは、一番手前でも、オーバーハングはない。つまり、0㎜である。

そうか、Gタイプ専用で、SMEのように微調整をしたかったのだ。

通常はスライドベースの真ん中あたりで微調整するのではと思うのだがどうなのだろう。

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左右のボードのGタイプの位置が、右で手前、左で奥になっている。

右のボードはGタイプ専用である。



SMEの微調整は。あまり意味がないと思えて仕方がない。

SMEは2点で円の接線方向をシェルが向くように調整する。

2点でしか接線方向にはならないからだ。

他は少しづれている。

そのように作られているのだから当たり前である。

カッティングマシーンは直線をスライドしながら接線方向に向けてカットしてゆく。

トーンアームは、軸を中心に弧を描く。

直線と弧が交わるのは、2点しかない。

2点以外でシェルが接線上を向くことはない。

接線上になくとも、聴いていて問題ないから、この方式が採用されているのである。

なるべく最適ポイントをという気持ちはわかるが、2㎜や3㎜のずれで音が変わるわけではない。



私が昔加工したスライドベースは、タイプGを基準に作りました。

タイプAのオーバーハングは15㎜で、たぶんSPUは20㎜のはずですから5㎜ほど短い。

オーバーハング15㎜で鳴らしたYouTubeです。

中島みゆき しあわせ芝居 Tannoy Chatsworth

オーバーハングは、それほど神経質にならなくてもいいと思うのですが。




推奨のオーバーハングを数ミリずれても何の問題もないのである。

お客様、オーバハング0㎜、約20㎜ずれた状態でAタイプを聴かれたそうである。

何の問題もなく聴くことができたそうである。

カートリッジがそっぽを向いているだけである。聴感上はそれほど変わらないのである。

まあ、できる範囲で良い状態にする努力をすればいいということだ。




さてボードの設計に入る。

タイプAを装着し、軸と針先の距離を測る。

オーバーハングはおそらく20㎜ぐらいだと思うが、Gのことも考えて18㎜とする。

軸と針先の距離から、18㎜を差し引いた長さが、ターンテーブルの軸とアームの軸の軸間距離になる。

Aタイプ用の穴の中心が確定したら、スライドベースがボード内に収まるように、楕円の穴をケガく。

アームレストの位置は、スライドしても追随できるように気を付ける必要がある。



出来上がった。

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Gタイプの位置

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Aタイプの位置

できるだけ音出しのテストをしたい。

ケーブルがない。軸を締め付けるボルトがない。

手持ちのSME3009とその部品があるから大丈夫だろうと考えていたが、甘かった。

時代により、仕様は変化していたのである。

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私のケーブルは、底から装着するタイプ、お客様のは横からである。

かちりと入らない。ゆるゆるである。

接触不良らしく、右の音がかすれたりする。

ガムテープで補強した。

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軸を締め付けるタイプと、一点で固定するタイプの違いがある。

締め付けるねじはない。軸がストンと落ちてしまう。

仕方がないので、これもガムテープで応急処置。

固定ではなく、落ちないようにしただけである。



テストの模様です。お聴きください。

浅川マキ 灯ともし頃 AS212 SME slide base typeA typeG 可変 Ortofon SPU G装着

Esquivel Scheherazade Ortofon AS212 SME slide base typeG typeA 可変 Ortofon SPU A装着






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