2023年04月

2023年04月26日

測定データは音の良さを保証するか?

前回のブログにコメントがあり、議論になった。

応答は10回。

そのコメントは、スペックを鵜吞みにする人からのものであった。

音を出すのではなく、シンクロスコープの波形を示し、一目瞭然と音の良さを誇るのである。



私のブログを読んでいてくださる方はお分かりだと思いますが、スペックが素晴らしいからといってよい音が出るわけではないというのが私の意見である。

そのあたりの論考は、以前のブログに書いた。

H.J.Leakと周波数特性
音は芸能芸術


の二つのブログにまとめたつもりである。

音の良さは人間の感覚にかかわる複雑なものですから、スペックが良いからといって人に感動を与える音の保証には全くなりません。


音は芸能芸術に書いた一部を引用する

電気知識が豊富で、最新の測定器をそろえ、スペックが良ければよい音が出るとばかりに活躍する者が現れる。

音に感動することはないから、スペックの良さと音の良さの関連性を検証する能力はない。

スペックの究極を目指せば、究極の音が出るはずだと、鬼の形相で邁進する。

オシロスコープもなしにアンプを作ったって、良い音が出るはずがないと言って、感動する能力のある人間を嘲笑する。

周波数特性がこんなに伸びている、ひずみ率は0.01だ。Leakは0.1だって、話にならない、と言ってうそぶく。

こんな人間がちょっと前までいたんですよ。今でもいるかもしれない。

引用終わり

この文は、こんな人もいるんじゃないかと、推測して書いたものです。

まさにそのような人がいたのだ。

このような人がどうして現れるのだろうかと考えてみる。

雑誌の製作記事で、出来上がった手作りアンプの性能を示すためにオシロスコープの波形などを載せているからではないだろうか。

科学的に測定し、性能が良いことを誇るのである。

そのカッコよさにマネする人が出てくるのだ。

測定器の波形を示せば、音の良さがわかるだろうというのです。



残念ながら、電気的性能と音の良さは一致しない

当然である、音は人間の感覚に訴えるものであり、音は芸能芸術に属するものであるからだ。

私は1970年代までの英国製部品を多用している。

測定値は現在のものに比べてひどく劣る。

こんな部品で組んだアンプの性能が良いはずがない。

ただし音はよいのだ。

一番下にGTKaudioのリンクが貼ってあるから音を聴いてみてください。

当たり前ですが、音の良さは、音を聴かなければ判断できません。

雑誌は、インターネット上で音出ししていないのでしょうか。

音出ししていないのであれば、やらなければならない。

そうでなければ、このような人が以降もなくなることはない。

音を聴かなければ、音の良さはわからないのです。

こんな当たり前のことがどうしてわからないのでしょうか。



あと一言。

私の耳に、どこで聴いたのかこんなセリフが残っている。

ヤーヤー遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。

そう、時代劇の武将が名乗りを上げるシーンである。

名乗りを上げた武将がせこい真似をしたり、卑怯だったりすれば末代まで語り継がれ恥となる。

だからしない。名こそ惜しけれ、である。武士の倫理観はこのようにして保たれていた。


さて、WEB上である。

匿名性が担保されているから、倫理観は失われる。

名乗りを上げて、覚悟を持って語れないものかね。

相手の素性は聞き出そうとするのに、自らは隠れようとするのをみると、こんなものかと嫌になる。

GTKaudio

gtkaudio at 03:40|PermalinkComments(10)オーディオ 

2023年04月13日

なぜ低音は魅力を失ったのか

この前のブログにコメントを寄せられた方にインスパイアされ、いつどうして現代のオーディオ界が低音に魅力を感じなくなったかを考えている。

その方は、現代のオーディオ界が大きなスピーカーを使わなくなったから、と考えられていた。

確かに、現代の高級オーディオのスピーカーは、昔に比べて小型になっている。

卵が先か鶏が先かの議論になるけれど、魅力ある低音を聴いたことのないオーディオマニアが、中高音さえ綺麗で魅力的な音を出せれば満足する状況があるから、スピーカーが小さくなっているようにも思える。

現行の高級オーディオで、魅力的な低音って、出るのでしょうか。



私がオーディオを始めた1960年代、魅力的な低音を出すことが主要命題であった。

そのあまり、ボコンボコンと締まりのない音を出しているマニアも多くいた。

私も魅力的な低音を出したいと思ったくちである。

スピーカーは重たければいい音が出るとまことしやかに語られた時代である。


失敗談である。

大きなスピーカーボックスを作り、魅力的な低音が聴けるはずと楽しみにしていた。

ダメだった。

どんなに素晴らしい低音が聴けるかとの期待は、木っ端微塵に打ち砕かれ、小さな部屋にプアーな音の大きく重たいスピーカーが、デカイ顔をして鎮座している姿は何としてもしゃくだった。

私だけならまだいい。

オーディオマニアを自任していた私は、友人も引きずり込んだのである。

一緒に作った。

ステレオで二人分だからデカくて重いスピーカーを4本。

二人とも部屋は狭い。

音の悪い大きく重いスピーカー。邪魔なだけだ。悲惨。

すべて私の責任である。

今でも友人に済まないと思っている。



私の結論としては、大きいスピーカーだからと言って必ずしも魅力ある低音がでるわけではないということである。

もちろん、大きいほうが出やすいけれど、必要十分条件ではない。

オーディオ理論に則って作るのもどうかと思う。

私などは、オーディオ理論を打ち立てた人間の耳を疑ってしまうのだ。

測定器で測って、低音も出ていますなんて言われても、出てるだけじゃダメでしょう、その音が魅力的かどうかのほうが大事なはずなんです。

最後は人間の感覚が判断する。

そう、オーディオは、芸能芸術に属するものです。



すみません、話が横道にそれました。主題に戻ります。

低音が魅力を失った原因は、真空管アンプに代わりトランジスタアンプが一世を風靡したことにあると思っております。

真空管アンプの時代にあれほど言われた低音の魅力が、トランジスタアンプの時代になって、全く言われなくなった。

トランジスタアンプの音は、真空管アンプの音とは全く異なり、高音が伸び、それが魅力的でした。

私も数年聴きました。

だけど嫌になったのです。

音が細い。太い音で聴きたいと思った。

トランジスタアンプは、100Wなんて簡単に出せるのでしょうが、10W程度の真空管アンプに比べて、音が細く感じるのです。

真空管アンプに戻りました。

今でこそ真空管アンプを使う人も多くなりましたが、当時はトランジスタアンプがほとんどで、真空管アンプマニアはほんの一握りでした。

さみしいものです。



部品を厳選してオーバーホールした古い真空管アンプは、太い音で鳴ってくれます。

魅力ある低音も出ます。

機種を選べば、小さなスピーカーでも魅力的な低音が出ます。

小さなブックシェルフスピーカーのGoodmans Maximを、オーバーホールした片チャンネル30WのLeak Stereo60で鳴らした映像を6年前YouTubeにアップしてありますので、聴いてみてください。

Maxim当然ですが、アルニコマグネットの時代のものです。

フェライトマグネットでは、こんな音は出ません。

Starker Kodaly Unaccompanied Cello Opus 8 Goodmans Maxim Leak Stereo60

次は、私には珍しく、CDを鳴らしています。

Sir Roland Hanna Trio Django Goodmans Maxim Leak Stereo60

CDの音って、明るいね。それがつまらない。


高音に特徴のある映像もご視聴ください。トランジスタアンプとは一味違った良さがお分かりになると思います。この映像が最も多いアクセス数を稼いでいるのですから、現代のオーディオマニアの高音好きは極まっておりますな。

Goodmans 12" alnico speakers Decca Check-Out LP

低音が魅力を失ったのは、真空管アンプを捨てたからです。

真空管アンプの中低音の魅力がわかっていただけたら、うれしいのですが。







gtkaudio at 06:35|PermalinkComments(12)オーディオ 

2023年04月08日

モノラルレコードとステレオレコードの比較

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BachとStarkerのモノラルレコードを再生したYouTubeは意外と好評だった。

ちょっと安心した。

現代のオーディオは、高音寄りの音を綺麗に鳴らすことが主眼で、低音は暗いと言って忌避される傾向があるので、このような低音寄りの音をわかってくださる方がいるのかが不安だった。

意外といるのですね、だから安心した。



このモノラルレコードはオリジナルなのに、20ドルという安い値段で売られていたので、すぐに購入した。

まあ、送料が24.31ドルだから送料のほうが高い。

合計6980円とのことであったので、オリジナルにしては安い買い物である。

私にとって少々傷があっても針音などはほとんど気にならない。

針音は頭の中で飛ばして聴いているようです。

本質的な音に魅力があればそれでいい。

だから、レコードは安いに越したことはない。



Ebayのリストをみていて感じたのは、同じレコードのオリジナルステレオ盤が、モノラル盤よりも高い値段であったことだ。

ステレオ盤もいいのかもしれない。

聴いてみたくなった。

その時に出ていた一番安いのが、送料込みで10,607円。

高いのは300ドルを超えるから、安いほうである。

ちょっと痛いけど、モノラル盤と比較するのも面白い。

購入した。



モノラル盤は、以前このブログでも紹介したモノラルレコードの再生に欠かせないDecca XMSを直接装着できるデッカのプレーヤー。

冒頭の画像がそれである。

ステレオ盤は、Garrard 301ターンテーブルにOrtofon AS212アーム、Ortofon SPU GEカートリッジ、当然GTKaudio特製の砂入り台座に載せている。

まあ、両方とも私の好きなリムドライブである。

音の良さでは、どうしてもリムドライブになってしまう。


IMG_0404

さて、YouTubeでモノラル盤とステレオ盤を聴いて、比較してみてください。

充実した中低音の良さがわかってくださるとうれしいのですが。

綺麗な高音を出すのはたやすいですが、エネルギーを必要とする質の良い低音を引き出すのは難しいものです。


J.S.Bach 無伴奏 No.2 In A Minor Janos Starker Decca XMS Decca record Player Monaural

J.S.Bach 無伴奏 No.2 In A Minor Janos Starker Ortofon SPU Garrard301 Stereo


J.S.Bach 無伴奏 No.5 In C Minor Janos Starker Decca XMS Decca record Player Monaural

J.S.Bach 無伴奏 No.5 In C Minor Janos Starker Ortofon SPU Garrard301 Stereo




gtkaudio at 01:36|PermalinkComments(2)オーディオ