2020年09月

2020年09月28日

Decca XMSの修理


アダプターはYahooに出品しても、XMS本体は出品していない。これには理由がある。

私自身、XMSをそれほど持っていないのである。

もちろん数個はある。ただし、LP用で良い音が出るのは、2個しかなかった。

良い音が出るかどうかの決め手は針である。

良い針がないのである。

アダプターを購入されたお客様が、店にいらして、良い音が出ている2個を購入してしまった。

YouTubeにアップして好評のHelen Merrill You'd Be So Nice To Come Home To を録画した際に使った針もそのお客さんの1個につけてしまったのである。

お客さんは信じないかもしれませんが、まともな店は、売るときはよいものからさきに売るものなのです。

御客さんが家に持ち帰り聴いたとき、がっかりする姿を想像するのがつらいからである。

残っているのは、音が不安定のものばかりになってしまった。


そんな時、Decca XMS用アダプターを購入された北海道のお客様から、XMSの修理を依頼された。

Garrard RC80をYahooオークションで購入され、それに付属していたげんこつを鳴らしたいのだけれど、LPをかけると盤上をスケーティングしてしまうとのことであった。すべらない時にたまたま聞こえる音はえも言われぬほど素晴らしいとおっしゃる。

SP用のXMSでないかとお聞きしても、Yahooで購入するとき、LP用かと質問したら、LP用で専門店に調整してもらったから大丈夫ですと言われたそうである。

さらに悪いことに、アダプターに差し替えるためにアームから外そうとして、力を入れたらXMSが壊れたらしく、音が出なくなったとのことである。

アームの先端にあるカートリッジ固定用のネジを緩めないで引っ張ってしまったのではとお聞きしたら、緩めたそうである。ひびが入っていたのかもしれない。

とにかく、まともに音が聴きたいそうである。音がお好きな方だと感じた。



私はこういうのに弱いのである。音は大好きだけれど、機械は苦手な文系の人。けれど、こういう人のほうが聴く耳は持っているのである。

まあ、オーディオ店などは、このような人のためにあるはずだ。やるしかないだろう。

修理してほしいとのことである。承諾したら、大変喜んでおられた。



さて、さっそく送られてきた。

観たと同時にSP用であると分かった。赤茶色のボディーに、黒い鉛の頭がついている。

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針はどうか。

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赤に塗ってあるではないか。SP用サファイア針だ。LP用サファイアは白である。

ルーペで針先を見たら丸まっている。間違いない、SP用だ。

ちなみに、緑はSPダイヤモンド、茶色LPダイヤモンドらしい。あまり見ないけど。


さて修理である。

3ピンのプラグの上半分が割れていて、下方のピンを軸に後ろにスライドする。コイルの片方が切れていた、導通はない。

半田ごてで外して、上半分を自由にし、接着剤を塗り固定した。下方のピンがガイドとなったので、簡単だった。

コイルを巻きなおすのは、私には無理なので、新しいコイルと交換した。

さて針である。XMSについている針はどれもイマイチなので、部品箱を漁った。

1個出てきた。色付けはない。サードパーティーの針なのだろう。

ルーペで見てよさそうだけれども、ダメなやつもある。鳴らしてみるしかない。

売ってしまった2個ほどではないが、今持っているものの中では一番良い。

これで我慢してもらう。

直したのがこれである。鉛の頭は、手持ちのプラスチック(ベークライト?)に交換した。本体より少し色が薄い。


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さて、依頼者に聴いてもらうため、YouTubeにアップした。

Helen Merrill You'd Be So Nice To Come Home To が好評だったので、同じ盤同じ面最後の曲である。

国産のベスト盤である。


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2020年09月08日

Decca XMSの使用法 

追加です。

Decca XMSを通常のユニバーサルアームで鳴らすアダプターを、Yahooオークションに出品している。

購入されることなくオークションが終了されるようになったら、出品をやめようと思っているが、4回出品して、ありがたいことにすべて時間内に落札されている。

購入されたお客様とお話しすると、カートリッジが原因でうまくならないこともあるようだ。

近頃の製品とは異なり、使用する人にある程度の知識と技能を要求した時代の製品ですし、新品とは異なり部品の劣化も進んでいる関係で、うまく鳴らせないこともあるかと思われます。

Decca XMSは、それ以降のカートリッジでは出せない音を、われわれの心をわしづかみにする音を、迫力を持って、時に繊細に提示してくれるたぐい希なカートリッジです。

なるべく多くの人に、Decca XMSをよい状態で聴いていただきたいと思っております。

Decca XMSをお持ちで、うまくならない際には、ご相談を受け付けます。

電話:070-5013-6660 e-mail:gakuyujp@yahoo.co.jp

私から購入された方でなくても結構です。電話は夕方から夜にお願いします。

私は万能ではありませんが、経験から得たコツなどはお教えできると思います。


私の友人が、モノラルからステレオに代わり、技術もどんどん進歩した中で、失われた素晴らしいものもあるなと言いました。

その通りだと思います。失われたものが、音の本質にかかわることだってあるのです。

Decca XMSが出す音もその一つです。

ステレオでは到底出せない音を聴くことが出来るのです。


現代の音は、きれいで細くて、こんなものがいいのかと私は思ってしまいます。

音のきれいさなど、芸能芸術とは関係ないものです。そんなものは私にとって無価値です。

どうか本物の音に触れてください。

追加、終わり。




モノラルレコードに限れば、これを鳴らすカートリッジとして、Decca XMSは最高のものであると私は思っております。

ただこれまでは、専用のターンテーブルを必要とし、簡単には鳴らすことができませんでした。

以前のブログにも書きました通り、GTKオーディオで作ったアダプターを使えば、通常のターンテーブルでたやすく鳴らすことが出来るようになりました。

Yahooに出品したアダプターを購入してくださる方もいらしゃいました。感動を覚えております。

私にとっては自信作ですし、XMS専用ターンテーブルで聴く音と比べても優るとも劣らない良い音が出ていると自負しておりました。

しかしながら、日本人の性向として、自らの耳だけを頼りに購入を決定できる人は少なく、権威ある雑誌や他人の意見の推奨がなければ、購入をためらう傾向があります。

ですから、YouTubeの音だけを頼りにして、初めての購入者がいらしたことに、私自身大いに感動しているのです。

私がLeakを紹介し始めたとき、よく聞いた言葉が、Leakって何でした。また、こうも言われました。「Leakは名古屋近辺以外では、人気がない」ほとんど忘れられたアンプだったのです。今や、オーディオファンならだれでもが知っているのですから、隔世の感があります。アダプターの購入者は、GTKオーディオにとって、リーク以来のエポックメーキングな出来事です。



さて前置きが長くなりました。5年ほどの短い期間ですが、Decca XMSを使用してきて気づいたこと、使用に際しての注意点などを書いておきたいと思います。わたくし、他人の助言を求めるタイプではなく、自己流で押し通す性格ですので、間違ったことを書くかもしれませんが、私の経験からのみこのような使用法になったとお考えいただき、取捨選択してご自身の使用法を確立してください。

ご存じのように、Deccaのカートリッジは、昇圧トランスを必要としません。

MM型のカートリッジと同様に扱ってください。

まずは針圧ですが、LP 8g、SP 20g程度だと思います。

基本的には針圧を測りながら、自分の好みの音を探すのが良いのです。めんどくさがりな私は、まあここらあたりの値なら気にしておりません。

針の状態ですが、使用前にルーペで確認したほうがよろしいです。

LPは先がとんがっております。SPは先端が丸みを帯びております。

丸みを帯びるのではなく、先端がなくなっているものは、欠けている可能性があり、レコードを痛めます。



次にカートリッジへの針の装着状態です。

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上の画像の状態では、音はひずみきいていられません。穴の壁に針が当たったらだめです。

次の状態になるよう、ネジを緩め指で針を左方向に押し付けながら、ねじを締めてください。

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上の画像の状態が正常です。

もともとは針を包むようにレジンのシートが張り付けてあります。緑色のプレート上にある長方形に見えるでっぱりがレジンシートが入るための隙間です。

これはダンパーの役割ではなく、ゴミが入るのを防いでいるのではないかと思っています。

私の場合は、レジンシートなしですべて再生しております。


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上の画像は、Tバー上の針と、カートリッジを分解した状態を示します。

Tバーの両端に、黒いゴムが見えますが、これが針を支えダンパーの役割を果たします。

このゴムが劣化しているため、より強く圧力をかけるように、ゴムが当たる部分にガムテープを貼っています。はみ出している部分は失敗です。

(以上については、ガムテープではなく薄いゴムを貼ったらどうかと当然考えると思われます。0.5㎜厚のゴムでやってみました。素晴らしいです。難しかった針の位置の調節が楽になりました。ネジの締まり具合を調節することで、ダンパーにかかる圧力を調節できます。一応報告まで)

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上の画像は、針が左へ傾くため、左側に圧力をかけるための工夫です。

組み上げ後、指で針を触って、簡単に動くようでしたら、ダメです。圧力が足りません。



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上の画像は、左右の傾きがないように調整した状態を示します。

まだ傾いている?もっと細かく調整してください。私はこんなもんです。



60年以上前の古い製品が、現代の精密なものに比べて、音が劣るということはありません。

現代の製品は、ただ使いやすくなり、性能が上がっているにすぎません。

ある人が、性能が上がれば音は細くなるといわれたそうです。

私からすれば、音が細くなるなら、性能を上げることが間違っているように思えるのですが。

測定器で測って、素晴らしい値が出た。このことが良い音が出る保証には全くなりません。

音を聴いてああ心地よいなあと感じるのは、人間です、測定器ではありません。

本当に良い音を聴くなら、人間の耳を頼りに作り上げられた古い製品でしかありえないと私は思うのですが。

さらに、良い音を聴くなら性能などという愚にもつかない数値を頼りにするのではなく、自らの耳を信じて音を作り上げるしか方法はありません。人それぞれ好きな音は違うのです。



まとめです。

①針の先端に欠けがないことを確認する。

➁針が穴の壁に触れないように調節する。

③カートリッジが盤面に対して水平になるよう調節する。


さてこの状態で聴いてみましょう。すべてユニバーサルアームにアダプターです。

Helen Merrill You'd Be So Nice To Come Home To

Starker Kodaly Unaccompanied Cello Opus 8(continued) Decca LP XMS + adapter + Ortofon RMG212

Louis Armstrong & His Hot Five Squeeze Me Decca XMS adapter for universal tonearms

gtkaudio at 08:23|PermalinkComments(0)オーディオ