2019年08月
2019年08月07日
HMV 蓄音機 Model 130
懇意のお客様がいらしていた。
蓄音機Loveのお客様だから、Decca XMSで、78回転SP盤を鳴らしている。
お客様、感じ入ったように、「これHMVよりいいですね」と仰る。
なんだ? 比較の対象が蓄音機かよ。
私は、Decca XMSに出会って、モノラルLPやSPのすごさを感じた。
Ortofonのモノラル再生も悪くはなかったが、太い音、情趣を感じさせる音、いずれをとっても、XMSのほうが私の好みである。
カートリッジは、Decca XMSがダントツであると思っている。
さてお客様、いたって真面目である。HMV蓄音機の音がすべての基準になっておられる。
私もかつて蓄音機は持っていた。米国製の定評のある機種だったけれど、そんなに良いとは思わなかった。
同じ機種の蓄音機だとしても、個々の状態にもよるだろうし、私の耳は英国の音が好みであるから、HMVなら良いと感じるかもしれない。
お客様の本気も伝わってきたので、購入してみる気になった。
HMVの様々な機種をご存じな方だったので、選んでもらうことにした。
Ebayで探した。HMV Model 130を見つけて、これがいいとおっしゃる。
音も出している。悪くなさそうだ。
ドイツのディーラーに卸したもので、犬と蓄音機のHMV(His Master's Voice)のラベルは貼っていないので、値段も安い。
私はコレクターではないので、ラベルは気にならない。音さえ良ければ何の問題もない。



さて、届いたのが上の画像のHMVである。
しかし問題があった。
長旅の間にひどく壊れていた。
ふたの蝶番のネジの所に力がかかったらしく、3か所木が剥がれて散らばっていた。
お客様残念がることしきりである。蓋といえども音に影響するとのことである。
私はというと、直せばいいと思っている。
完璧とはいかなくても、言われなければわからないぐらいには直せる。
直したのが、下の画像である。

蝶番の上の文字の書いてある板の左はじと右下あたり、色がちょっと違うでしょう。
ここは暗がりになるから、気づくことはない。
まあ、これぐらいやれば、音に影響はないだろう。
HMVのラベルの代わりに、下のようなラベルが貼ってある。


さて、鳴らしてみた。
いいねえ、魅力的な音だ。お客様、なるほどです。
SP特有のざらざらした針音など、ほとんど聞こえない。もとい、まったく気にならない。
XMSと似ている。というより、当時の理想の音として、蓄音機の音が基準だったのかもしれない。
直接音を感じる。
HMV蓄音機、素晴らしい。
さて、いい、良いといったって、言葉じゃわからないよね。
音は文学じゃないんだから。
YouTubeにアップしました。片鱗でも味わってください。
蓄音機に慣れていません。針を置く不手際、ご容赦を。
HMV Model 130 78 rpm Knee Drops Louis Armstrong
HMV Model 130 78 rpm Danse Espagnole Ginette Neveu
HMV Model 130 Sophisticated Lady Duke Ellington
近頃アップした映像に、同じ盤をDecca XMSで鳴らしたものがすべて含まれています。次のリンクで探して、音を比較してみてください。
音が似ていることも確認できると思います。
GTKオーディオ
2019年08月01日
XMS(ゲンコツ)のコイル交換
XMS(ゲンコツ)のコイルは、経年変化と元々の線材の細さゆえ、導通のなくなっているものが多い。
どこかで断線しているのだ。
断線箇所を探り当て、何度か修理しようとしたが、ことごとく失敗した。
唯一、知り合いのカートリッジメーカー社長が、巻きなおして修理してくれた。
ただし、手間暇かけて修理しても 、線材の劣化を考えるといつまで使用できるか不安である。
その社長に相談して、新たなコイルを巻いてもらった。
コイルを新調して、XMS特有の太く情趣を感じさせる音が出るかは、やってみなければわからない。
線材も国産で、オリジナルとは異なる。
技術の進歩で、抵抗等格段に改良されているとはいえ、その故に音が良くなっているという保証はない。
いや、オリジナルには及びもつかないひどい音になる可能性だってある。
そう、何度も経験したことだ。
だから発注個数は小さなものになり、一個当たりの価格は高くなってしまった。
YouTubeで何度も紹介したように、新調コイルもなかなかの音がしている。
XMSのオリジナルコイルは、DCRを測定すると、3.3KΩのハイインピーダンスのものから、100Ωのローインピーダンスのものまで、いろいろある。
3.3KΩなどは、線が細く、よくこんな細い線を使う気になるなと思ってしまうほどである。
新調したコイルは300ΩあまりのDCRである。当然、比較的線は太い。
それでも半田付けがうまくいかないことが多い。
英国人の器用さに、舌を巻く。


さて、上2枚の画像は、お客様からのコイル交換修理依頼されたXMSである。
赤系統のプラスチックボディーはLP用XMSであることを表し、底面プレートの緑色は、ハイインピーダンスのコイルであることを表す。
ただしコイルは断線している。


こちらの画像も、修理依頼されたXMSである。
ボディーの黒は78回転SP用、底面プレート緑、ハイインピーダンス。
ちなみに、ボディーの色は、黒、こげ茶、赤、あずきの4種類がある。
黒、こげ茶は、Deccaと浮彫のある頭の部分が鉛であり、SP用。
赤、あずきは、Deccaと浮彫のある頭の部分がプラスチックであり、LP用。
推測ですが、LP,SPともそれぞれ2種類あるのは、針の太さの違いではないかと思います。または、針がサファイアかダイヤモンドかの違いかもしれません。
今となっては、この区別ができるほどふんだんに針を手に入れることはできませんから、あまり意味はありません。

今回の修理で、針はおにぎり型のケースに入れて送られてきました。
左がその送られてきた針ですが、右のXMS用と少し違うのがわかるでしょうか。
Tバーの土台面から針先までの長さが異なります。
測ったところ、左は約6㎜、右は約9㎜です。
左の針は、Decca H用の針です。
左の針では、XMSの穴から針先が出てきません。
大変間違いやすいので、ご注意ください。
今回の修理完了後のテストには、私手持ちの針を使いました。
さてテストです。YouTubeにアップしました。
Julie London It's A Blue World. Decca XMS Marconi PX4
78 rpm Sophisticated Lady Duke Ellington Decca XMS
新調コイルの音、悪くないでしょう。
Decca XMSのスペックを捜してみました。
底面プレートの色で、インピーダンスは次のようになっていました。
- Gold 30 ohm
- Red 170 ohm
- Silver 1,300 ohm
- Green 4,000 ohm
Tバー針の土台にある色分けで次のような区別があるようです。
StanndardはSP用ということです。
- XMS Red – Standard sapphire
- XMS Green – Standard diamond
- XMS White – Microgroove sapphire
- XMS Brown – Microgroove diamond