2019年03月
2019年03月20日
Decca XMS ゲンコツの針 Decca MK1の無垢針は存在しない


Decca XMS ゲンコツの針は、大きなサファイアを削りだしたように見えます。
昔はずいぶん豪勢なことをしていたもんだと思っていたのです。
ルーペで見て、違うことがわかりました。
樹脂の台に小さな宝石を接着し、削りだしているようです。
デジカメのマクロ機能を使って、針を接写してみました。

これでははっきりとはわかりませんね。
次の画像のほうがわかりやすいと思います。
同じ針を撮ったのですが、見る方向で全く違います。

考えてみれば当然のことですね。
全部がサファイアなんて。でもちょっと見にはそう思ってしまう。
1950年代にこのような技術があったのですから、Decca MK1以降の針も、そのように作られていたと思われます。
Decca MKシリーズには、全部宝石の無垢針と金属の台に小さな宝石を接着した針の2種類が存在すると思っていましたが、無垢針と言われているものも、このようにして作られたと考えるのが妥当かと思われます。
すなわち、樹脂の台か金属の台かの違いにしか過ぎない、ということです。
Decca MK1以降の針も、全部宝石の無垢針は存在しないのではないでしょうか。
2019年03月06日
PX4 シングルアンプ 2台目
一台目のPX4シングルアンプは、電気知識の豊富なお客様に作ってもらい、電源のオイルコン化と最終の音調整を私がした。
Leakとは別の魅力を持ったアンプに仕上がり、気に入られたお客様に購入していただいた。
また作りたいと思ったが、古い英国製アンプから取り外したアウトプットトランスが特殊で、2度と手に入りそうにない。
仕方がないので、別の英国製アウトプットトランスを使い、同じ電気知識の豊富なお客様に頼み二台目を作ってもらった。
作ったお客様の話では、今回のトランスは、周波数特性が抜群に良いそうである。
周波数特性が良いからと言って、気に入った音が出るとは限らない。
特性だけなら、現在作られているトランスのほうがずっと良いはずである。
このようなアンプでは、特性よりも音色のほうが私には気になる。
1950,60年代の英国アンプから取り外したアウトプットトランスを使うのは、音色を重視しているからである。
出来上がってきた。
カップリングコンデンサはオイルコンになっていたが、電源は電解コンである。
音を聴いた。充分である。
電源をオイルコン化すれば、かなり良い音になる予感がする。
やってみた。

うまく行かない。
オイルコン化する際、電解コンデンサの十分な容量は到底無理である。
どうしても容量はかなり小さくなる。
そのせいで、音が波打ってしまう。
整流回路から数えて2段目と3段目のコンデンサの容量で、波うちが出たり出なかったりするとわかった。
かえって2段目を小さな容量にしたときのほうが、音の波うちがなくなる。
ただ音が細くなってしまう。
私にとって、細い音ほどつまらないものはない。
現代のアンプに満足できないのは、この音の細さである。
細くてきれいな音なんて、ちっとも面白くない。
さてどうするか。
2段目を元の容量に戻し、3段目に大きな容量を入れることにした。
現行のオイルコンなら、小さくて大容量のものがある。これにしてみた。
大丈夫である。波打たなくなった。
音も魅力的である。エネルギー感のある太い音が出ている。
結果の音さえ良ければ、何を使ったって問題ない。
最後に、カップリングコンデンサも私好みのオイルコンに換えて、音を調整した。
よし、良い音だ。
良い音だと書いただけでは、何もわかりませんよね。
書くだけなら、何とでも言えます。
くだらない雑誌と同じになってしまう。
私は、YouTubeで音を出します。
全てモノラルですから、一番左側の傷のあるスピーカだけが鳴っています。
聴いてみてください。途中のピョロロンは、胸ポケットの無節操なスマホが場をわきまえず鳴った音です。
今回久しぶりにシャンソンを聴いてみた。
若いころに聴いただけだったので、その頃は思わなかったけれど、ちょっと違った気分を感じた。
シャンソンが流行っていたころ、歌う人も紹介する人も、しゃれたパリのイメージを感じさせた。
どちらかというと、知的で俗にいう芸術のイメージを感じたのである。
改めて聴いてみて、音から感じるイメージは、情と暗さである。どぶ板が目に浮かぶ。
ちょっと意外であった。
ついでに、Starker Kodalyのいつものレコードで、聴いてみた、
古いオルトフォンのモノラルカートリッジで鳴らした。
最初の無音の時はさみしいので、私の鼻息を入れておきました。
PX4のシングルアンプ、出力はせいぜい3Wほどである。
3極管シングルアンプは、細いけれどもきれいな音という常識を覆らせていると思いませんか。
それに、音の太さはワット数で決まるわけではないこともわかりますね。
アンプの製作は、測定機に頼って良い数値が出ているからでき上がり、ではありません。
自分の耳を信じて、自分好みの音を作り上げる、それ以外にありません。
それが個性になるのです。
他人の真似をしたって、つまらないではないですか。