2017年08月
2017年08月10日
2017年08月01日
日帰り旅行 遠州大念仏 その3
大念仏が始まった。
あとから分かったが、友人からここに座れと通された場所は、サンルームになっていて、太鼓を鳴らしながら踊るのを真正面から見る特等席だった。
一列になって通り過ぎる演者の衣装を見て、驚いた。
次郎長一家と見まごういでたちであった。
浴衣を端折り、たすきをかけ、三度笠を被る。
歴史からすると大念仏のほうが古いから、渡世人がこちらの真似をしたのかもしれない。
森の石松が出てきて、余計なことを言いそうである。
「おおお・・・、おめえ、・・・おおお・・・おくれて来たんだってなあ」
5,6人が太鼓を置いて、サンルームの正面で演奏を始めた。
体を4分の3回転させ、戻しながら太鼓をたたく、その動作をいつまでも続ける。
三度笠が、体の回転以上に回る。
途切れた状態があるのに、良く音が合う。
どのぐらいの時間だったろう。かなり長く感じた。しかし飽きることはなかった。
体力が必要である。
女性もいる。
そういえば、演者はみな若い。
終わった。
演じていた人たちも、外のテーブルに載せられたふるまいの酒肴で宴会をしている。
東京からの友人が、焼香したらと声をかけてくれたので、祭壇の正面に向かって手を合わせようとした。
「違う、こっちだよ」と友人。
なるほど、祭壇の横に、遺影が飾ってあり、ろうそく線香が供えてある。
つくづく、俺はだめな人間だなと思う。
常識というものが抜けている。
終わったと思っていた大念仏、終わってはいなかった。
休憩だったのである。
今度は、太鼓を持って踊りだした。
すごい体力である。
延々と続く。
前半と同じ人たちかと思っていたが、休憩中に交替したとのことであった。
そうだろう、大した運動量である。
前半と同じくらいの長い時間、演奏して、太鼓を先頭に右にはけてゆく、鉦、歌い手等、総勢20人ほどが踊りながら退場した。
遠州大念仏は、国の無形文化財に指定されているというが、素人の私が見ても、なかなかのものであった。
訓練だけでも、これを維持するのは大変だろう。
良いものを見た。
さて、外の駐車場で、主催者の友人が、胡麻焚きのように、小さな木片を交互に積み上げ、たき火を始めた。
その上に太い竹を乗っけた。
竹が爆(は)ぜるのを待つのだそうだ。
経験のない私は、それがどのくらいの爆発であるか想像つかない。
手で竹の位置を変えているから、大した爆発ではないのであろう。
初盆のお母さまを送る風習らしい。
かなりの時間がたっても、なかなか爆ぜない。
爆ぜないで終わることもあるらしい。
参会者に、ダメかとあきらめの雰囲気が出てきていた。
多くの人たちがいる中、はしゃいだ友人の孫が変身のポーズから、きめ台詞らしい言葉を発した時である。
ボン、と爆ぜた。
なるほど、良い音である。
孫が導いたようでもある。
終わりの合図にふさわしい。
散会した。
東京から来たもう一人の友人は、早く帰らなければならないらしく先に帰って行った。
私はもう少しいる。
友人は泊まって行けと言うが、夜眠ることができないだろうから、最終の新幹線で帰ることにする。
普通の生活ができないものはこのような時不自由である。
友人が浜松駅まで送ってくれた。
30分ほど時間がある。
乗車券の自動販売機にトライしてみる気分になった。
自動販売機も人を見て、とろい奴だ、からかってやれと思うんじゃないかと、私はなるべく近づかないようにしていたのだ。
できるだけ厳しい表情を作り、やってみた。
何だ簡単じゃねーか。
厳しい表情が効いたね。
終わり。