2017年05月
2017年05月15日
大根すり
銭湯で、番台のおばちゃんと話をしていた。
時として、軽忽な私をどやしつける太い声のおばちゃんである。
迫力がある。
根はやさしい人だから、どやされても、悪い気分はしない。
さんまを大根すりで食べるという私の話に、大変な興味を示した。
「おいしいけど、大根するの疲れるからいやなの」
「大根すりは、力がいる。旦那さんにやらせればいい」
「やらないよ、あの人」
「大根すると、汁が出るでしょう、どうしてる」
「捨てますよ」
「駄目、汁をコップに集めるの」
おばちゃん、飲むふりをする。
「え、---辛いでしょう」
「そんなことない」
「旦那、私がこっそり飲んでいるのを見て、だからお前は元気なんだな、って言うよ」
そうか、大根すりのピリッとくる辛さから、汁は当然もっと辛いと思っていただけかもしれない。
やってみなければならない。
やってみた。
「うん、いける」
汁の辛味はずっと薄い。
嘘だと思ったら、やってみてください。びっくりしますから。
ジャスターゼ、いっぱいですぜ。
2017年05月02日
またまた銭湯
銭湯に行っていると、なじみになる人も増えてくる。
銭湯に行き始めたころのことだ。
風呂から出て、脱衣所で服を着ていた時である。
私より明らかに年上である老人が、立ったまま靴下をはいた。
驚いて、「やりますねえ、俺は立ったままじゃあ、靴下ははけない」
私が初めてこちらから話しかけた人である。
仲良くなった。
聞けば、お兄さんが社長を務める屋形船や釣り船に乗っているという。
釣り船では櫓を漕いでいるそうだ。
バランス感覚がいいはずである。
さらにジムに通い、体を鍛えているという。
働かなくてもいい身分らしいが、この仕事が好きなのである。
スリムな体で、筋肉質の体を保っている。
江戸っ子なのだ、気風(きっぷ)がいい。
この人がいるとみんなが寄ってくる。
ある時、タバコの話になった。
「タバコか、小学校1年生の時やめたよ」
うーん、なかなか刺激的。
話はこうである。
当時は進駐軍がいた。
「やっこさんたち、タバコをちょこっと吸って、すぐに捨てるんだ」
それを拾ってくる。
木場だから、木がごろごろしている。
「松の皮をほぐすだろう、タバコと混ぜて、辞書の薄い紙で巻きゃあ、出来上がりだ」
「これがまた旨えんだ」
太い材木をうず高く積んだ陰になったところで、出来上がったタバコを吸っていたんだそうだ。
残念ながら、煙が上がる。
「後ろにお回りがいるんでやんの」
「とっつかまって、家に連れていかれて説教だよ」
当時だ、びんたの一つや二つくらったはずだ。
「それが小学1年生の時だ」
「以来吸ってねえ」
なかなかやるねえ。