2016年02月
2016年02月29日
Decca XMS (げんこつ) カートリッジ その3
前回、前々回のブログで、Decca XMSの音を聴いていただいた。
アップしている私は、YouTubeの統計を見ることができる。
平均視聴時間が、大変長くなっている。
見てくださった方々が、これはと思った証拠である。
そう、DeccaのXMSは、良い音である。
DeccaのMK1のモノラルは、昔から聴いてきた。
ステレオ以上に人気がある。そのうえ、ステレオに比べて数が少ない。
お客様から、モノラルはないかとのお問い合わせはたびたびある。
お断りすることがほとんどである。
なぜモノラルなのか。
こたえは決まっている。ステレオ以上に、太く、より情趣を感じさせるのである。
太く、情趣のある音は、時代を経るにつれて、性能がよくなるにつれて、どんどん薄まっていった。
現代の高級オーディオの、綺麗でスースーする音など、私には聴いていられないのだ。
私だけではない。真空管アンプに先祖返りしている現在の状況を見れば、多くの人が望んでいるものがわかるはずである。
性能ではない、見てくれではない。結果としての音なのである。
DeccaのXMSは、どうなのか。
XMSは、まさに太く情趣を感じさせる音なのである。
それは、MK1モノラル以上である。
私は何度も、性能ではない、結果としての音であると言ってきた。
YouTubeの音からも、そのことが分からないだろうか。

今回、私の手持ちのモノラルカートリッジのいくつかと比較してみた。
まずはConnouisseur(コニサー)。
Decca XMSと同時代のカートリッジかもしれない。
XMSと同様、T型の針で交換可能である。

左Decca XMS交換針、右Connoiseur交換針
コニサーの針の曲がりは正常です。垂直に対してXMSが15度傾かせると同様なことを針の曲がりで実現している。
聴いたとき、XMSの前に聴きたかったなと思った。
XMS以前に聴いていれば、これが最高と思ったに違いない。

続いては、定評のあるバリレラトリプルプレイ。
2本の針、LPとSPだろうと思っていたけれど、両方ともLPだった。
決して悪くはない。なるほどと思わせる音である。
比較して、Decca XMSは秀逸である。
構造は、MK1モノラルの祖先ですね。針交換ができるところが異なる。
針交換は、のちの世代のようには簡単ではない。
小さな穴のふちに触れる状態で取り付けると、音がひずむ。
使いにくいのが難点ですが。
リークのアームとカートリッジでも聴きたかったが、SP用で比較できなかった。

2016年02月16日
Decca XMS(げんこつ)カートリッジ その2
追加です。
新しい針が届きましたので、もう一個のモノラルカートリッジで鳴らしてみました。
前のはソケットに完全には入らなかったのですが、今回のは入ります。
入力ボリュームが不調であったPoint Oneモノプリアンプを、VarislopeⅢに換え、両方ともバリスロープにしました。
これで入力の調整ができます。
TPA12アームの特徴でしょうか、これで鳴らすと、歌手がそこにいるように聞こえます。YouTubeでは残念ながらいなくなってしまいます。
聴いてください、ちょっとかわいらしい感じの女性ボーカルです。
このレコード音が良いので、ジャケットは日本製で、レコードはオリジナルかと、思っていました。
昨日、レーベルを確認したら、日本の会社製であると書かれてありました。
ちょっとがっかりしましたが、音が良ければそれはそれでいいです。

前回のブログの続きです。
ようやく、Decca XMS(げんこつ)を鳴らすことができます。
Thorens TD124につけたのでは、Garrard TPA12にアダプターを付けると、オーバーハングが40㎜以上になり、さすがの私もこれでは試せないなんて書きましたが、実のところ試しちゃったのです。
まあ、そんな性格です。
やってみたら、何のことはない、ちゃんとトレースしました。
これで、オーバーハングは、適当にと考え、15㎜にしました。

DeccaのMK1アームがついていたGarrard301用砂入り台座を、実験用と決め、新たに穴をあけてしまいました。
アダプターを付けたので、当然重くなります。
調整範囲を超えますので、TPA12のカウンターウェイトに鉛のおもりを追加しました。
針圧は3.5グラムほどです。仕様が分からないので、適当です。
げんこつカートリッジには、なんだかわからないベロみたいな物が付いています。
レコードに触れてコロコロ音がするので、テープで固定しました。
こんな状態で、針がどうかもわかりませんが、鳴らしてみました。
当然ですが、げんこつタイプでないXMSと似たような音です。
あっちのXMSのほうが使いやすいですね。
見た目、げんこつタイプのほうが魅力的ですが。
それでは聴いてください。
再発もののレコードでは、うまく鳴らないものもありました。
Serge Chaloffのレコードは、再発もの(日本製)ですが、鳴りました。
YouTubeではこのカートリッジの魅力であるエネルギー感がなくなるようで、それが残念です。
ネットで調べてみたら、仕様が出てきました。
針圧は3.0グラム。
針の角度は、垂直方向から15度前方に向かうように装着する。
TPA12の場合、アームの軸を最高の位置にしても、15度よりも大きくなります。
もしかしたら、あのベロみたいなのが盤に触れそうで触れない角度が15度なのかも。
これ以上のことをやる気になりませんので、これで我慢します。
昔のものは、仕様のことなど意に介さない機器に不慣れな人も使ったんです。
適当でも鳴るもんです。
オーバーハング40㎜でも同じように鳴るんですから。
アームの位置が2㎜ずれていて、オーバーハングが正しくないなどと気に病む必要はないのです。
この時代のものは適当でなります。
敷居を高くしたら、不慣れな人は使えなくなってしまいます。
ガラード301のような誰にでも使いやすい機器を、熟練しないと使えないなどと、馬鹿な噂を立てたのは誰でしょう。
ガラード301は、個体差などほとんどないシンプルでしっかりとしたまことに使いやすい製品です。
ガラード401の音は、301と変わらないと私は思うのですが、違うと言う人もいます。
よほど耳がいいんでしょうね。
私の場合、そのような微妙な違いを聞き分ける耳を持ちたいとは思いません。
意味のない違いを聴きわけることがオーディオだと思っている人が多すぎます。
太い音であるか、情趣を感じさせる音であるかが分かればいいんです。
音は芸術芸能の世界です。
ああ、そうそう、お客さんと確認したのは、「やっぱり音は濡れてなくてはね」というのもありました。
2016年02月13日
Decca XMS (げんこつ) カートリッジ
追加です。
このブログの最後に書いたげんこつタイプではないカートリッジの針をSPからモノラルに交換して鳴らしてみました。
店で聴いていると太くかつエネルギー感に満ちた音ですが、YouTubeで伝わるでしょうか。
聴いてみてください。
内部配線を新しくしたGarrard TPAアームと安物のPickeringカートリッジの組み合わせは、驚きであった。
アームもカートリッジも、私は全然評価していなかったのである。
だから、音が出た時、何だこの音はと思ってしまった。
TPAアームの威力が大きい。
基本的に、ビンテージトーンアームの内部配線を交換することはしない。
このときは、導通があったりなかったりするほど線材にへたりが来ていたのである。
それが幸運に作用した。
別の懇意のお客様も興味を持たれたようで、同様にオーバーホールしたアームとPickeringのカートリッジを、試しにお送りした。
こんなことがあるのかと、感動しておられた。
もちろんお買い上げになられた。
二人のお客様ともに、若いころ小池レコードの音に魅入られたお客様である。
その時、小池レコードで使われていたのが、TPAアームとPickeringだったそうである。
小池レコードのおじいさんは、天才的な耳を持っていたのでしょう。
商売の方法は嫌いですが、人を魅了する音を出していたことだけでも、尊敬せざるを得ません。
良い音を出せないオーディオ店が多すぎますから。
私は全く小池レコードのおじいさんは知らなかったのですが、Leakに関わるようになって、小池レコードで聴かれたお客様とのつながりができました。
今になって考えると、小池レコードが使用していた機材の選択は、絶妙です。
機材の選択だけをとっても、才能は必要です。才能がない人たちは、測定値だけに頼るのです。

話がそれてしまいました。
本題は、DeccaのXMS(げんこつ)カートリッジです。
Pickeringの新たな音を聴いて、他のカートリッジを試してみたくなってしまった。
上の画像にある左2個のげんこつと、換え針3個は、もともと持っていました。
右2個のげんこつと1個のアダプターは、昨日届きました。
古いガラードのターンテーブルについていたものです。
赤色は、LPモノ、黒やこげ茶はSPです。
モノ2個は導通があります。SPは導通がありません。
アダプターが欲しかったのです。
以前、TPAアームに、げんこつカートリッジを装着してモノラルの音を聴いたときはあります。
いかんせん、アームが短すぎる。
音は良いと思ったのですが、ほんの短い間しか聴けませんでした。
TPAアームにこのアダプターを付ければ、うまくいくかもしれないと考えました。
ただし、見たところ、TPAにはちょっと長いのではという危惧がありました。

残念ながら、やはり長すぎます。
測ってみると、25ミリ以上針先が前にせり出しています。
かなり適当な私でもちょっとね。
それと、アダプターの右に見えるプラグ部分の樹脂が半分くらい無くなっています。
無くなっている部分は、元のターンテーブルのアームに固着して取れません。
これから少しずつ直してゆきます。
カートリッジは、DeccaのMKシリーズのステレオに比べれば、単純ですから、簡単に治ると思います。
交換針もありますし、新たに2本購入して、そのうち来るはずです。
25ミリ以上のせり出しは、アームの軸間距離を調節して、オーバーハングだけは正常なところに持ってゆくつもりです。
完璧ではないかもしれませんが、聴ける状態にはします。

あ、そうそう、3ピンのソケット部分を探していたら、こんなものが出てきました。
これもXMSですが、げんこつではないタイプです。
形は違いますが、内部の構造は同じです。
SP用でした。TPAにはそのまま装着できます。
鳴りました。
ただし出力が大きすぎる。
アダプターには、抵抗2個とコンデンサ2個が入っています。
減衰させているのかもしれません。
あるいは、音質を調整しているのかもしれません。
2016年02月07日
芸術、芸能
芸術と芸能について考えている。
本質的な意味において、芸術と芸能に差異はないというのが、私の考え方である。
その本質は、自己表出である。感覚の領域である。
一般に考えられている、芸術は上位に位置し芸能は下位などという馬鹿げた考え方を、私はとらない。
能や歌舞伎は、世界で認められたから、芸術分野に昇格させようなどという芸術側の思いあがった考えには嫌気がさすほうである。
だいたい、ジャンルで上下関係が決まるなどありえない話だ。
その分野に従事する個々の人間の覚悟の問題であり、他人(ひと)の心をどれだけ揺すぶることができるかの問題である。
その他人(ひと)の心とは、未来の他人(ひと)である可能性もあるのだ。
時代を先取りして歩む真の芸術家や芸能家が、貧困に喘ぎ、蔑(さげす)まれてきた例など枚挙にいとまがない。
後世になってようやく評価されるのである。
創造の苦しみに耐えながら、日々努力する芸能家や芸術家もいれば、俺は偉いんだと、ふんぞり返っている馬鹿者もいるということだ。
ジャンルではなく、個々の人間の問題である。
現代においては、芸術という言葉は鼻高々、芸能という言葉はちょっと控えめ、の語感がある。
芸術という言葉には、スノッブさがつきまとう。
芸事に関する限り、「俺は河原乞食なんだよ」と自嘲する人間のほうが、信用できると私は思っている。
芸術は上で、芸能は下などという考え方は間違っている。
能や歌舞伎が、芸能から芸術に昇格する筈もない。
移ったとしたら、ただ横に移動しただけのことである。
2016年02月03日
The Platters
あまりにも古くて、知る人が少ないのではと思っていた。
Youtube上で、The Platters Habor Lightsを検索してみた。
杞憂であった。
多くの人がアップしている。
アクセスも多く、数十万回試聴されている動画もある。
興味がわいたので、それら動画をいくつか試聴してみた。
何だこんな音かと、驚いてしまった。
おそらく音源が悪いのである。
どれもこれも、同じような音がしている。たぶん音源はCDだろう。
CDを作った時のマスターが劣化していたのだろうか。
あるいは、音のセンスのないものが、CDを作ったのかもしれない。
港の情景描写の音は良い。
うたい始めると、いやになって聴くのをやめてしまった。
すべてを聴いたわけではなく、アクセス回数の多いものだけであるが、すべて同じであった。
情景描写は、新たに音を取り直したのかもしれない。
CDの音がすべて悪いと言っているのではなく、焼き直したCDはこのようなものもあると言っているのです。
LPだって、音のセンスのない人が作ったものは全く聴けやしません。
試しに、YouTube上で、platters harbor lightsと入れて検索し、私のLPの音と比較してみてください。
結局音だって、芸のうちなんです。
能書きたれても、音を感じる力がなければ、どうしようもありません。
論理では解決できない感覚の領域であるがゆえに、芸能、芸術っていう分野があるのです。
そうでなければ、科学の一分野になっていますよ。