2014年12月
2014年12月20日
音について
栃木から車でいらしたごく懇意にしていただいているお客様と、久し振りにご来店いただいた高知からのこれまた懇意のお客様のお二人と、Leakの音を聴いていた。
お二人は初対面である。音を介してだから、すぐに打ち解ける。
お二人とも私が整備したLeak TL/50 2台で、ステレオ再生をしておられる。
私は、小出力のLeakで十分楽しめるのですが、お二人は断然TL/50派である。
小出力のLeakもお持ちの方々で、比較して語られるのですから、説得力はある。
残念ながら、私は少数派だ。
そのお客様達が見えた時、ちょうど別のお客様から頼まれた砂入り台座に、Garrard301、Ortofon RMG212、Aシェルアダプター、Aタイプオルトフォンカートリッジを装着し終わって、音出ししていた時だった。
音を聴いて、ひどく感動された高知のお客様から、お持ちのGarrard301とOrtofon SMG212をつける砂入り台座の注文をいただいた。
栃木のお客様は、Garrard301にDeccaのアームをつける砂入り台座を頼まれている。
家具職人さんに作っていただいた4個の砂入り台座は、これですべて売れてしまった。
もちろん次をお願いしているけれど、忙しい職人さんだから、どうしても時間はかかる。
私が死んだら、今作っていただいているオーディオ関連の木工品の製造販売権のすべてをその職人さんに譲ることにしている。
さて、四方山話になった。四方山話といっても、オーディオ仲間である。音についての話以外にはない。
私が、ビンテージの真空管アンプの修理に、フィルムコンを使うなんて詐欺のようなものだと思うと言った時である。
高知のお客様が、「だましているのではないのです。修理している人が、音が分からないだけなんです」と仰った。
意表を突く言葉にはっとした。
そうか、そうなのか。
この言葉で多くの疑問が解けた。
確かにだまそうとする人間は、それほど多くはない。
修理している人が、フィルムコンとオイルコンの音の違いを明確に意識しないなら、より安く性能も格段といいフィルムコンを使うに決まっている。
私には全く違うものに思われるから、高価で性能が悪くてもオイルコンを使っているだけなのだ。
オイルコンであっても、音はそれぞれ違うから、どれを選ぶかはその人のセンスである。
私がこのブログ上で、音にとっての胆は、コンデンサであると書いたのは、6年か7年ほど前である。
店を始めて、本格的に修理するようになって1年も経っていなかった。
1年も経たずにわかることを、何十年もそれに従事している人が分からないはずはないと思い込んでいた。
それが間違えだったのである。
何十年やってもわからなかったのであろう。
日本のオーディオは、電気技術を中心に発達してきた。
それは当然のことではあるが、もっと芸術的観点から見る必要があったのである。
技術ですべてを解決することはできない。
その人の感覚が大事なのである。
音楽家が、自分の出す音を聴きながら、自らの音を創出して行く。
それがその音楽家の個性となる。
音楽家の心と、創出する音は一体のものである。
オーディオも、様々な部品を選択しながら、自分の好みの音になるように作り上げて行く。
その音が、それを作り上げる人の個性となる。
音を作り上げる人間の心と、その音とは一体のものなのである。
オーディオファンなら、このことは無意識にわかっているはずである。
自分が出している音を否定されたなら、自分自身を否定されたかのように感じるはずだ。
音は自らを表出するものであると、思っているからである。
「文は人なり」と同様、「音は人なり」である。
私は、作品が、その作品を作り上げた人をほうふつとさせるもの、そしてそのことが人々に感動を与えるものが芸術であると思っている。芸術的感動は、常に人を介してもたらされる。
オーディオは、歴史が浅く、いまだ認められてはいませんが、まさに芸術なのです。
決して、測定器で計れるものではありません。
電気知識ですべて解決できると考えるのは間違えです。
現代は「言葉あまりて、心たらず」の時代です。
日本人の情感は鈍磨しております。
日本人は、「心あまりて、言葉足らず」の民であったはずです。
YouTubeに新規の映像を4個アップしてあります。
さらに追加しました。私には珍しく、Shureのカートリッジを使ってみました。
さらにさらに追加してしまいました。こんどはOrtofon MC10です。私のシステムでは、こんな風に鳴るんです。
オルトフォンの現行ステレオ昇圧トランスで最も安いST-5とMCシリーズで下位に属するMC10 Superの組み合わせで鳴らしました。
すぐ上の映像は、日本では見られなくなっている。YouTube(Google)からは何の連絡もないから理由はわからない。理由を探るため、いろいろ試してみる。こういうのもあるという例として、上のリンクは消さないでおく。
2014年12月07日
Sandfilled Turntable Ortofon SMG212

懇意のお客様から、砂入りのターンテーブルを予約いただいていた。
出来上がるまで、ひと月の予定だったが、忙しい職人さんだから、延び延びになっていた。
ようやく出来上がってきた。
2,3日でお客様から送られたOrtofon SMG212を装着し、試聴用にYouTubeにアップすると約束していた。
いざ作業をするとなると、必要な工具がどんどん出てくる。
お客様のものである。自分が作るときのようにあるもので適当に済ますわけにもいかない。
いくつかを注文しているうちに日が過ぎてゆく。お待たせすることになった。
昨日ようやく届き、夜作業をした。
道具があるから、作業は順調に進んだ。
夜の11時ごろ、試聴できるようになった。
私自身が楽しみである。
久し振りのOrtofon SPU専用アームである。
軽針圧用のSMEのアームより、SPUは良い音がするはずである。
さらに、Garrard301用砂入りの台座なのだ。
今までにない音が聴けると期待していた。
SPUはモノラル1個しかない。
これでテストする。
針を落とした。
音が出ない。何で?
Leakは接触不良が多い。そのせいか。
いろいろ試みる。ボリュームを上げるとかすかに聞こえる。
しかしよい音には程遠い。
そういえばお客さん、自分で台座につけた時、あまり良い音がしなかったとおっしゃっていた。
自分の技術のせいだと思うとのことであった。
このことか。
お客様の技術のせいではない。
実はアームのどこかがおかしいのだ。
ここから追及が始まった。
DINのソケットとプラグでつながれている。
プラグ以降のRCAピンケーブルがおかしいのではと目星をつけた。
このようなビンテージのアームに、DINはいやだなと思う。
まあ、付いているのだからそれを使う。
DINプラグを外して、わたしのRCAプラグのついたケーブルを同じ配列で半田付けした。
さてどうだ。
鳴らない。
さあ重症だ。
内部の配線が傷んでいたら線を交換しなければならない。
導通は良いようだ。

導通を確かめた時である。
カートリッジの受け口は、4個のピンが正方形状に並んでいる。
一つのRCAプラグの+と-の導通を見ると、受け口のピンは横並びになっている。
おかしい。
記憶では、縦並びになるはずである。
そうか、DINの接続がおかしいのである。
作った人が間違えたのか。それとも特殊な用途のためのものなのか。
わからない。
これでは鳴るはずがない。
小さな音が出ただけめっけものである。
カートリッジを参考に、DINを正しい配線に変えた。
これでどうだ。
出た。
素晴らしい。
今まで私が聴いたSPUの中で最高の音である。
豊かな情趣を感じさせる。
こうでなくっちゃ。
終わった時、朝の6時になっていた。私の寝る時間である。
夕食も食べていない。食べるのを忘れるときはたまにあるから問題はない。
残念ながらモノラルのSPUしかない。
YouTubeにアップしましたが、全部モノラルです。
Ortofon ST-M25も使いました。使ったほうがよいように感じます。少しの違いですが。
聴いてください。
ジャズです。
クラシック。
ポップス。
さすが職人さんの手作り。美しい。

