2014年05月

2014年05月29日

同窓会

 
なじみのお客さんが久しぶりに見えた。
 
頼まれてオーバーホールをしていた別のお客様のLeakが出来上がっていたので、それを聴いてもらった。
 
よもやま話になった。
 
そのお客様は、大手の広告代理店に勤めている。
 
 
 
お客様の高校時代の同窓会の話になった。
 
同窓会にはあまり興味がないので、聞き流していた。
 
お客様も同様で、同窓会にはほとんどタッチすることがなかったそうである。
 
今回罪滅ぼしに、初めて手伝ったとのことだった。
 
この辺は、まあ聞き流していた。
 
 
 
お客さん、スマホを取り出し、写真を見せてくれた。
 
何の変哲もないお店が写っている。
 
「学校帰り、腹をすかせたうちの学生たちが買い食いをしたパン屋さん。当時のまま残っていました」
 
うん?俄然興味がわいてきた。
 
「このような写真を自分で撮って、カレンダーを作ったんです」
 
そうか、すごい企画力だ。
 
 
 
地方の高校にもかかわらず、東京で開いた同窓会に何百人という同窓生が集まったそうである。
 
そこで配った。
 
「これを見た時、ウオーって声が上がったでしょう」
 
「ええ」
 
そうだろう、感動した声が聞こえるようだ。
 
他の人にはただのパン屋でも、同窓生には全く別のものだ。思い出がちりばめられている。
 
 
 
「すごい企画力ですね、だれでもが気付きそうで、なかなか気づかない。さすがプロだ」
 
すっかり感服してしまった。
 
 
 
最後の写真は、校舎の最上階から撮った景色だった。
 
遠くには、雪を頂いた山並みが見えて、美しい写真である。
 
「こんなにきれいな景色だったんですね。高校生の時は全く見えていなかった。何を見ていたんでしょうかね」
 
「女の子でしょう」
 
「そう、女の子を見ていたんです」
 
 
 
 


gtkaudio at 20:29|PermalinkComments(0)友人列伝 

2014年05月13日

東京物語 小津安二郎

 
大学を卒業し、私立の高校で講師をしていた時の話である。
 
週1回、午前中だけ授業を受け持っていた。
 
午後は暇になる。
 
帰り道の線上にある銀座に立ち寄り、必ずと言っていいほど並木座で古い名画を観た。
 
多くの名画を見たはずなのに、今も記憶に残っているのは、川島雄三監督の「幕末太陽伝」、稲垣浩監督の「無法松の一生」、小津安二郎監督の「東京物語」である。
 
 
 
幕末太陽伝は、喜劇であるはずなのに、後に残るのは哀しみや諦めの感覚を感じさせる不思議な映画であった。
 
とにかく非凡な才能を感じさせる監督だと思った。
 
のちになって、森繁久彌が、「川島雄三監督は、あれほどの才能がありながら大した作品を残さなかったのが残念だ」というのを聞いても、幕末太陽伝だけで十分じゃないかと思ってしまうほどでした。
 
 
 
いけない、ここでは東京物語のことを書きたいのである。
 
並木座で東京物語を見た時、こんなすごい監督がいたのかと衝撃を受けた。
 
私から見れば豊かとも思える中流階級の平凡な日常を描きながら、画面の緊張感で、人の心を捉えて放さないのである。
 
私が観てきた日本映画の中で、最高の傑作であると思った。
 
これは日本文学であると感じた。
 
 
 
こののち、小津安二郎という名前が記憶に残った。
 
すると聞こえてくるのである。
 
海外で、人気がある監督だというのである。
 
何だろう、こんな些細な日常の機微を描いた映画を、どうして外国の人に理解できるのだろうか。
 
このような感覚は日本人特有のものであって、外国人にはわからないはずなのにと思った。
 
いまだによくはわからない。
 
 
 
 
おそらく私の中の、日本人にしかわからない機微と勝手に設定した思い込みに、ずれがあるに違いない。
 
日本的と勝手に思っているものが、私の想像よりもはるかに普遍性のあるもののようなのだ。
 
 
 
 
先日、映画関係に従事されているお客様とお話ししていた。
 
当然映画の話にもなる。
 
興味深いお話を伺った。
 
2012年英国で、映画に関する投票が行われた。
 
今までに作られた世界の映画の中で、最高傑作と思われるものを全世界の映画関係者に選んでもらったのである。
 
世界の映画監督による投票では、小津安二郎の「東京物語」が第1位になったという。
 
このことを、私は知らなかった。
 
私だけだろうか。あまり話題にもならなかったように思える。
 
このような監督を持ったことは、日本人にとって誇りだと思うのですがね。
 
 
 
 
とにかく、私の考える日本的なるものは、間違っていますね。
 
微妙な顔の変化、ちょっとしたしぐさから、他人の心を読むなんてことは、日本人に固有のものではなく、どこの国の人々もやっていることなんですね。
 
 
 
著作権が切れたせいでしょうか、9枚のDVDの入った小津安二郎大全集が2千円以下で買えるのです。
 
白黒で傷みの激しいものもありますが、どの映画も質は高いです。
 
特に原節子主演の紀子3部作、「晩春」「麦秋」「東京物語」は、画面も綺麗で見応えがあります。
 
断っておきますが、私この会社の回し者ではありません。
 
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gtkaudio at 21:12|PermalinkComments(0)欧米人