2010年12月

2010年12月31日

タバコの箱を開ける

 
なじみのお客さんがいらしていた。
 

店は部品等が散乱していて、足の踏み場が無い。
 

少しのあいたスペースに座ってもらっていた。
 

私が動くときは、ちょっとどいてもらうこともある。




そのときもどいてもらって、ボリュームの調節をしていた。
 

ふと見ると、先ほどお客さんの座っていた床の上に、タバコが置いてあった。
 

封の開け方が異常である。ぐちゃぐちゃな開け方をしている。
 

「何でこんな汚い開け方をするの」




返ってきた答えに、なるほどと思った。
 

「ごみが出るのがいやなんですよ」




私も、切り取ったあの小さなごみの捨て場所が無いとき、ポケットに入れる。
 

家に帰ったとき捨てればいいのだが、そのままになっていることが多い。
 

ポケットに入ったまま、いつまでも残っている。
 

手を突っ込んだとき、あのごみが手に触れると気分が悪いのである。
 

確かに切り取らなければ、ごみになることは無い。




私のやり方は、日本たばこの指図通りである。
 

お客さんは、自分に合わせて工夫している。
 

私は誰でも同じようにやるものと思い込んでいた。
 

ちょっと面白かった。




写真左が私のやり方。右がお客さんのやり方。


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2010年12月13日

音の芸術性

良い文に出会いましたので紹介します。


<結局、すぐれた文学や絵画には、説明しがたい香気がある。読んでいる者を精神の高みへ誘ってくれるだけでなく、官能的でさえある。
 高い意味でのぬめりといっていい。たれもがそれが植物であるか合成樹脂製であるかを見わけるのに、ちょっとさわってみる。ぬめりを感じて生物であることにはっとするように、すぐれた芸術作品であるか否かを見るのには、この操作だけでいい。>



この文自体に私は香気を感じてしまいます。

文章は、その意味を伝えるだけではありません。

書いている人の人格や覚悟(すなわち香気)に包まれながら、読む喜びを得ているのだと思います。

読む人に喜びを与えるから、文学は芸術なのです。

意味を伝える道具だけなら、芸術ではありません。

絵画のことは分かりません。

ただ想像はできます。

絵画の分かる人は、絵画から醸し出される香気に浸る喜びを感じているはずです。



この香気は全ての芸術に敷衍可能なことに思えて仕方ありません。

私は音も芸術であると信じています。

ということは、音にも当てはまるはずです。



真空管オーディオフェアーに出展して以来、店に聴きに来られるお客様も少しですが増えてきました。

初見のお客様とお話しながら、レコードをかけます。

急に話が途切れます。

ああ、聴き入ってくださっている。

わかるのです。感動されていることも。

5人中4人はそうなります。

音がいいなと感じることは、そういうことです。

香気とかぬめりを感じておられるのです。



さて一人の人はそうはならないのです。

あせります。

後から考えると、あせっても仕方のないことです。

私の音が、その方を感動させる音ではないということなのだと思います。

ある作家を好きであるかないかは、読む人によって異なります。

全員が好む作家などいないのです。



音も同様です。

全ての人を魅惑する音など、ないのです。



私の目指す音は、上記の文の中でいわれている香気とかぬめりとか云う何とも説明の出来ないものです。

ただし、その香気とかぬめりも、人によって異なるのかもしれません。



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2010年12月01日

Wharfedale Briggs

 
Wharfedaleのユニットが手に入ったので、10インチと8インチユニット用のオリジナル箱は無いかと、取引先の英国人に打診してみた。
 
8インチはオリジナルではないけれど良いのがあるし、10インチ用はWharfedale/Briggs製のがあると言う。
 
ただしペアーではなく、1本だそうである。
 
無知なことに、Briggsを知らなかった。
 
彼はメールで何度もBriggsを強調して書いてくる。
 
さらにsand filledも強調する。
 
適当に読み流していた。
 
あまりに強調するので、検索エンジンを使い、「Wharfedale Briggs」で引いてみた。
 
ちゃんと出ている。
 
BriggsはWharfedaleの創始者で、主にデザイン(設計)を担当していたそうである。
 
まあ、天才的な人であったらしい。
 
懇意のお客さんたちに話すと、Briggsを知らなかったのは私だけだった。
 
 
 
取引先の英国人は耳が良い。
 
今まで彼が良いといったもので、悪かったためしは無い。
 
それで彼の言い値で購入した。
 
写真が送られてきた。
 
コーナー型でなかなか良さそうなスピーカーボックスである。
 
 
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裏の写真を見たとき、何で裏蓋を取った写真を送ってきたのかと思った。
 
メールを見ると、cabinet/baffleと書いてある。
 
そうか、バッフルなんだ。三角形(五角形)の上蓋も取り外せるようになっている。
 
 
 
 
さて来てみると、唯の板にしてはなかなか重たい。
 
音を聴いてみることにする。
 
コーナー型なのに、店にはコーナーが無い。
 
品物で埋まっている。
 
ままよ、後面開放で聴く。
 
さらにこのバッフルは3個の固定用穴を持ったスピーカーしか付けられない。
 
よほど古いタイプである。
 
4個の穴の開いたスピーカーの1個だけとめて聴いた。
 
私のやることはこんなもんである。
 
 
 
さて聴いてみた。
 
驚いた。
 
今まで聴いた音の中で、最高の音である。私の好みに合ったということか。
 
以前紹介したBriggs製の箱、30cmユニットの組み合わせで聴いたよりも、25cmバッフルボードのほうがさらに好みの音がする。
 
うん、Briggsは天才だ。
 
音の一つ一つが詳細である。何にも増して、たっぷりとした情趣に聴き入ってしまう。
 
私にとって情趣の無い音はパスである。聴いたってつまらない。
 
 
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それではこの音が出てくる所以(ゆえん)はなんだろう。
 
 
 
 
 
sand filled、これしかない。
 
俄然興味が湧く。
 
よく見ると、フロントパネルの上端に、ベニヤの薄い板が打ちつけてある。
 
2枚の板の間に隙間があり、そこに砂を流し込んでいるのだろう。
 
すごいことをする。音をよくするために数々の実験をしたに違いない。
 
Briggsの情熱を感じる。
 
ウィングのような側面のベニヤはsand filledではなさそうだ。上部にベニヤの薄い板が打ちつけていない。
 
板の振動を抑制しているのは、前面のフロントパネルだけのようである。
 
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やはり50,60年代はオーディオの完成した時代ですね。
 
再認識させられました。
 
以降、この時代を越える音が出てこないのは、残念な限りです。
 


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