2008年11月

2008年11月30日

疾風

塾の当時の話です。



いつもは授業の始まるぎりぎりにやってくる中1の男子生徒が二人、珍しく他の生徒が誰もいない時刻に来て始まるのを待っています。


何か様子がおかしい。


いつもは話しかけなくても、べらべらと早口で話しかけてくる片方の生徒が、いすに腰掛け首をうなだれて神妙にしています。



「おい、どうしたんだ」



もう一人の生徒がこたえました。



「事件を起こしちゃったんです」

あとは、問わず語りににその事件を話してくれました。





彼らは、二人して塾の始まる一時間半前にゲームセンターに行き、ゲームを楽しんでいました。

事件を起こした生徒がふと外を見ると、お母さんが歩いています。

ゲームセンターの入り口に向かっているようです。

「やばい、逃げなければ」と思った瞬間に、彼は動き出していた。





彼は中一としては小さく、小学3年ぐらいの背の高さです。

疾風のようにすばやい。

残念ながら無駄にすばやい。

すなはち、性格は軽忽です。




入り口と反対方向に、外に通じる空いたところがある、と咄嗟に判断しました。

友人を置き去りにして、その方向に突進しました。

疾風のごとくすばやい!

もう一度いいます、残念ながら、無駄にすばやい。





次に起こったことは見るも無残でした。





「うまい、外に出られる」と思った瞬間です。





何かにぶつかった。



耳元で大きな音がした。




彼は外に出たまま、呆然としていました。




人が寄ってきました。お母さんも。




ゲームセンターの大きなガラスが割れていました。



しかし,怪我は全然していません。




彼は、慌てたために、ガラスがあることが分からなかったのです。




お母さんと一緒に店の人に謝り、いくらかは弁償することになりました。


そのあとすぐ、塾に来たのですから、当然落ち込みは尋常ではありませんね。


今日帰ったら、しこたま説教です。



「お母さん、何ていってた?」

「情けない」って。



勉強が好きでもない我が子が、塾に行くといって1時間半も前に家を出て行けば、訝しい気持ちになるのも当然です。


ゲームセンターに行くんじゃないかと目星をつけて、来て見ればこの有様ですから、「情けない」ですよ。


お母さんのお気持ち、お察し申し上げます。

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2008年11月26日

暗号

塾の頃の話です。


見た目はかわいらしいお嬢さんで、授業も静かに聴いている中3の女子生徒がいました。

多くの人がいると目立たないようにしていますが、小さなグループの中では面白いことを言ってほかの人たちを笑わせています。

性格もあっさりとしていて、こだわらないところが好かれていたのでしょう、友人も多かったです。




ちょうど私立の受験が差し迫った頃、塾に来て自分の受ける高校の過去問を解いていたときです。

質問されてその子の所に行き、分からないところを教えたあとだったと思います。

受験の発表が怖いという話から始まりました。




「発表のあと、友達と会ったときの暗号を決めたの」


「どんな?」


「合格だったら、<ウンコ出た>って言うの」



「落ちたら?」



「下痢止まらず」



<いかん、下劣な俺の性格がうつってしまった?>


<まあいい、受かった落ちたの直接表現より、少しは笑える表現で、その場を持ちこたえようとする、子供たちなりの工夫なんだ>





当時は私立の推薦制度はなく、一発勝負でした。

受ける私立は、その子の実力からすると一ランク上の高校でしたので、落ちる可能性も充分あります。

出来る限りのことはしましたが、後は合格してくれることを祈るのみでした。





さて、発表の日になりました。

結果が分かったら、まず中学校の担任に報告したあと、塾に来るようにいってあります。

ほかの生徒たちは来ましたが、その生徒はなかなか来ません。





駄目だったのかなと思い始めた頃、ようやく友人と二人でやってきました。



残念ながら、あまり喜んでいる様子でもありません。





「駄目だったか?」



「補欠だったの」



「補欠か、たぶん大丈夫だよ」



大丈夫なことが多いけど、確証があるわけでもない。




補欠の暗号は決めていなかったはず。





「それで、友達にはなんていったの」





「半分出た」





うーん、確かに。





結果は、大丈夫でした。

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2008年11月24日

いなるもの

塾で教えていた頃のことです。

授業中に終えられなかった中3の女子生徒に補習授業をしていました。



その子が訊いてきました。

「いなるものってなんのこと」

「言葉だけ取り出したってわからないよ」

「英語のテストの発音の問題で出てくるの」




う?




あれか、<下線の部分の発音の異なるもの> のことか?




「それコトナルって読むんだよ」

「異なるって何なの」

「違うってことだよ」




「そーなの、それならそう書いてくれればいいのに」

「いつもそれがわかんないから、適当に丸つけてるの」



あらら、英語が出来ないのは英語に問題があるからだけじゃないんだ。

塾で教えていた頃は、このような呼吸を忘れてしまうような瞬間が、時々ありました。

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ヒトマル

「役員一同、ヒトマルとなってーーーー」

ん?・・・なんだ?



わが町会長から発せられた言葉に、一瞬とまどい、次に漢字が頭に浮かび、納得した。


「ひとまる」 = 「一丸」 =  {いちがん」


すなわち、「役員一同イチガンとなってーーーー」



私はその町会長の下で役員をしていた。

ちょっと恥ずかしい気分になったが、まあこんなのは愛嬌というものだ。

私自身、本を読んでいて、難しい漢字を適当に読んでいることはある。



他人のことは言えないと思いつつ、麻生首相はひどすぎる。

特に難しい漢字でもなんでもない。

「ちょっと勘違いしただけ」ではすまないだろう。



政治家は言葉の感覚が鋭敏でなければ務まらないはず。

日本の首相が、芸能人お馬鹿キャラとかわらないのでは、あまりに寂しい。



日本語に対する、一般人の感覚も持たないものが日本の首相か。






かつて、塾を主宰していたとき、生徒の日本語能力の低下を実感していました。

学力の低下とともに、どんどん日本語が伝わらなくなって行くのです。

教育とは言葉を教えることですから、学力が低下することと日本語能力が低下することは同じことです。



日本人なら、日本語を教えることが教育の主目的です。

25年以上、主に理系の科目を教えていた私の結論です。



生徒は数学が分からないというより、そこに使われている言葉が分からないことのほうが多いのです。

数学も国語の勉強と思って教えておりました。

日本語を身に付けさせることが教育です。

日本語さえ身につけば、習わなかったことであっても、大人になってから、必要になったことを自分で学習できるのです。




首相は、日本人の範となるような日本語を話さなければなりません。

それも首相の大切な務めです。

官僚の書いたものを棒読みし、間違えているようでは、どうしようもありません。



ですから、ちょっとした間違いだといって平気な顔をしている麻生首相に腹が立ちました。



ブッシュがアメリカの大統領になったとき、これでアメリカも駄目になると思いました。

ブッシュは無内容なことを全く知性を感じさせない言葉でまくし立てる指導者です。

予測が外れました。世界を駄目にしてしまいました。

麻生首相、知性のなさと無内容さでは、ブッシュに良く似ています。

日本を駄目にするでしょうね。

世界を駄目にする力が日本にないこと、それがせめてもの救いです。

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2008年11月09日

Leakのバイブル firsts in High Fidelity

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冒頭の写真を見るたびに、1960年代のオーディオの熱気を感じます。

担当者が説明をしているのでしょうか、それともLeakの試聴をしているのでしょうか、人々の真剣な眼差しから、良い音を聴きたいというこの時代の欲求がピークに達していたことを示しているように思えるのです。

このような食い入るような眼差しを感じながら、1950,60年代の作り手たちは現代のオーディオファンをも捉えて放さない魅力ある名機を作り上げていったのだと想像しております。


そこらあたりの考察は、以前のブログにも書きましたのでご参照ください。

http://blogs.yahoo.co.jp/gakuyujp/47380207.html



さてこの写真の出ている本が、firsts in High Fidelityです。

Leakに関する情報が網羅されています。

Leakで発売されたほとんど全ての機種に相当する30以上の回路図が載っています。

格調高い文章であることは、英文からも窺えます。

オーストラリア人著者のLeakに対する並々ならぬ愛情が感じられるすばらしい一冊です。

gtkaudio at 18:32|PermalinkComments(0)オーディオ