2007年07月
2007年07月17日
デッカ Decca ffss Stereo カートリッジをモノラルに改造
英国で調整してもらうと、必ずといって良いほど、針交換とオーバーホールまでされてしまいます。
仕方がないので、モノラル用のカートリッジにすることにしました。
今はLondon Referenceを作っているところで、直接針交換してもらっていますが、以前は人を介していました。
その英国人に、日本人にはモノラルの熱狂的なファンがいるので、Deccaのモノラルカートリッジは無いかと訊きましたら、
「おお、俺はモノラルの好きな日本人を愛しているよ、モノラルが一番だ、ステレオなんてまやかしに過ぎない」
と、過激な言葉が返ってきました。
私はステレオも大好きですが、Deccaのモノラルのすごさもわかっています。
こちらがあまりにモノラルと言うものですから、その英国人がポロリと、「ステレオはモノラルに替えられる」といいました。
やり方までは教えてはくれませんでしたが、その言葉さえあれば、あとはどうにかなります。
写真を見てお分かりのように、赤腹、白腹、とやっきになっておりますが、正体はこのような薄い板一枚です。
昔はどうか知りませんが、修理に出しても、白腹に取り替えることなどありません。
さすがに壊れているときは気を使って取り替えてくれます。
前置きはこのくらいにして、モノラルに替えます。
ステレオとモノラルを比べてみると、モノラルには3番目の写真の上部にある2個のコイル、コンデンサ、抵抗がまったくありません。
この部分はすべてステレオにするための機構です。
モノラルのカートリッジにコンデンサや抵抗がないことが、その音のよさにつながっていると私は推測しております。
モノラル成分は、4番目の写真の中央部にある、針が貫通しているコイルで生成されます。
2本の線が出ているのが確認できると思います。
つまりモノラルのカートリッジには、コイルはこれだけしかないのです。
この成分を左右のチャンネルと直結すれば、モノラルカートリッジになります。
以前紹介したことがありますが、アームから出ている3本のリードのうち、赤が左チャンネル、緑が右チャンネル、黄色(白の場合もある)がモノラル成分になります。
黄色は通常、途中で切って配線しませんが、これとシールドでモノラルを取り出すことも出来ます。
さて配線です。
3番目の写真に4個の端子が見えます。
左から2番目の端子だけ涎のように下に垂れ下がっているのが見えます。
これがシールドです。この涎部分が、ケースの内側全面に蒸着された金属膜に接して、ノイズの侵入を防ぎます。
モノラルのコイルから出た線の一端がこのシールドと結ばれています。
まず、上部の2個のコイルやコンデンサ、抵抗から出たすべての結線を半田を溶かして端子から取り外します。
涎のたれていない3個の端子を細い裸線で結びます。
私は裏側から半田付けしましたが、表側のほうが良かったと後悔しております。
シールドの端子に結線した以外のモノラルのコイルから出た線を3個の端子のどれかに半田付けします。
半田は手早くやらないと、プラスチックのボディーが溶け出します。
これで終わりです。
このように書くと難しそうですが、簡単に言えば、
ステレオ機構から出たすべての線を取り払い、涎以外の3個の端子を線で結び、モノラルのコイルから出た2本の線の一方をシールド(涎)へ、もう一方を3個の端子へ結べばよいのです。
どうか、ステレオでちゃんと音の出ているカートリッジを改造しないでください。
片チャンネルの音が出ずに眠っているような壊れたカートリッジがあれば、トライするのも良いと思います。
その際も、すべて自己責任でお願いします。
台無しになっても、修理を断られることになっても、私は関知しません。
以上の説明でお分かりにならない場合は、あきらめてください。
2007年07月05日
邂逅 Garrard 301
題は忘れました。
舞台は南の島だったように思います。
荷役に従事する現地の人たちが働いているなか、二人の英国人が話しをしています。
一人が昔語りを始めます。
現地人の若い美男美女が、燃えるような恋をして、何らかの障害のため、別れるという悲劇の物語です。
話の最後に、今話した美男美女が、いまそこで荷役に従事している、老いさらばえた醜い老人と老女であり、その若いころの話であったことが明かされます。
さらに、その老人と老女が、灼熱の恋をした当の相手であることを、お互いにわかっていないと話は結ばれます。
いつものように、モームのペーソスというか、ある種、人間に対する毒を含んだ短編でした。
危うく、美男、美女になるところでした。
新規のお客様から電話をいただき、Yahooに出品しているGarrard301を見てみたいとのことでした。
もちろん結構です。
車で来られるそうです。
ビルの下に到着されたと電話が入りました。
近くの100円パーキングは高いため、お車に同乗させていただき、ちょっと離れた安い大きな駐車場へ案内しました。
車内で、
ちょっと話をして、その内容から同じくらいの年かなと思い、
私、「60歳ぐらいですか」
「ええ、まだなってはいませんが、もうすぐなります」、とお客様。
「私は6月で、60になりました」
「私は10月です」
「じゃあ、同じ学年ですね」
お住まいが私の高校の近くだったので、
「__高校はご存知ですか」
「ええ、私はそこを出ています」
うん?同じ学齢、同じ高校。ということはーー。
「エエー、同級生か」
「3年のときのクラスは」
「B組」
「一緒ジャン」
そのとき二人は顔を見合わせた。
男と女ならと思うところですが、60歳ではね、どっちでもいい。
「荒井先生」
「おお」
お互い、衆道の気はないので、モームの話のような灼熱の恋はありませんでしたが、年を尋ねなければ、Garrard301を購入していただき、それで終わっているところでした。
危ういところでした。
小説の題名がわかりました。モームの「赤毛」です。
高校時代に読んだものですから、どうも、違う部分もあるみたいですが、大まかには同じはずです。
興味のある方は読んでください。