2011年02月20日
初めての輸送事故
海外から送られてくる商品の輸送事故は今までにも何度か経験している。
海外の場合は、基本的に文句は言わないようにしている。
梱包が悪いことが多い。
文句を言って、返品したところで、送料が高くつき、あまり意味はない。
国内での事故は想定していなかった。
10年近く送ってきたけれど、一度も輸送事故はなかった。
丁寧な梱包をしている自信があったので、起こるはずは無いと思っていた。
だが、起きたのである。
まとめてお買い上げになったお客様に、いくつかお送りし、お気に入りのものを選んでいただいた。
当然、選ばれなかった品物を返していただくことになる。
返品の際には、私が送った時の梱包材料を使っていたので、私がやった梱包とほぼ同様であった。
だから大丈夫のはずである。
前日とどいた2個口の梱包を解いてみて驚いた。
まず、プリアンプ2台の箱を開けた。
Leakのプリアンプのフロントパネルは、アクリル製である。
2台共に、右下の角が砕けている。
おまけに、1台の鉄製フレームがゆがんでいる。



メインアンプとプリアンプ1台ずつ入ったもう一つの梱包を解いた。
上に載っていたプリアンプは無事だった。
メインアンプの鉄製シャーシにゆがみがある。
どうしてこんなことになったか理解不能であった。


まずお客様に連絡して、発送する時の状況をお聞きしなければならない。
お尋ねしたところ、発送の際は傷はなかったとのことである。
宅配をしてくれた会社に連絡した。
輸送中の事故であると証明できるかが、問題である。
連絡してその日のうちに、輸送事故担当の人が来てくれた。
箱を調べて、どのようにしてこの状態になったかを推理してくれた。
確かに輸送中の事故との判定である。
「梱包は丁寧にしているつもりですけど」
「ええ、この梱包ですと、こちらが恥ずかしいです」
まあ一安心である。
補償の話になった。
私がお客様に売る価格で買い上げてくれるそうである。
「買ったものはどうするのですか」
「売れるものは売りますが、売れないと廃棄処分になります」
「それは厭です」
このあたりになると、修理し綺麗にしたものしか分からない。
金だけの問題ではないのである。
フロントパネルは、補修は効かないから、新たに購入したプリアンプから、移植するしかない。
メインアンプは板金塗装をしてもらうことで合意。
保障料はずっと低い金額だけれども、品物はこちらに残る。
物に対するこだわりは持たないようにしようと、心に決めていたはずなのに、何か自分の新たな一面を見たような気分になった。
かつて読んだ夏目漱石の逸話を思い出した。
正確ではないかもしれないけれど、こんな話であった。
女性のお客さんが、お世話になったお礼にと、白木の綺麗な箱を贈り物として持ってきた。
文箱かなんかなのであろう。
雨の日だったのである。
持ってくるときに、泥跳ねがかかってしまった。
それを見た漱石は、一所懸命泥を取ろうとお客の前で拭いていたらしい。
とうとう最後に云ったそうである。
「こりゃ駄目だな」
お客にとってはつらい話である。
ひどいとは思うが、漱石の気持ちは少し分かる。
客の気持ちなど斟酌できないほど、美しさが損なわれることに耐えられなかったのである。
私も1日沈んだ気分であった。
gtkaudio at 05:19│Comments(0)│オーディオ