合宿 その2研究室の決定

2009年03月23日

追試

大学4年のときである。

追試を受けることになった。



3年で学んだ科目のテストが行われた。

テストを実施するのは、3科目だけだった。

授業は出ていなかったので、ノートを借りてきた。

日頃、笑いという蜜を与えているので、みんな喜んで貸してくれた。



さて、ノートを見て驚いた。

さっぱり分からないのである。

日本語と思えない。無理。

それで決めた。試験は受けない。



3科目中2科目が追試になった。

大学教授とはむごいものである。

こちらは白旗を揚げて、戦闘意欲を示していないのである。

降参している敵に向かい、まだ弾を撃ってくる。

こちらは、もう弾が尽き果てているのにである。



喜ばしいことに、受けていないものがもう一人いた。

一番仲の良い山岳部の部長をしていた友人である。

うれしくなった。

友人の家に行って見た。

楽しく語り合いたかったのである。



様子が違った。

パジャマの上にちゃんちゃんこを着て、鼻水をすすっている。落ち込んでいる。

体調が悪いというか、試験を受けなかったことがよほどショックだったらしい。

奴は一言言った。

「彼女に、この姿見せたくないよな」

奴の心の中には、彼女はもう第三者の目として、入り込んでいるんだ。

よほど好きなのだろう。



以前、奴と彼女が付き合い始めた頃、彼女に電話をするんだが何を話したらよいかと相談を受けた。

「いいか、女というものはロマンチックな言葉が大好きなんだ」

「適当な星を決めて、あれは僕たちの星だよ、って言えばいいんだ」



電話をかけた。結局云わなかった。

<何だこいつ常識あるんじゃん、つまんねー>



あんなことはもうやっちゃあいけないのだ。



さて追試である。

私には、もう撃つべき弾はないのである。

仕方がないので、弾雨の中、体を投げ出すつもりで、追試を受けに行った。



学科のみんなが待っていた。

私に、対策を授けるのである。

「同じ問題が出るから、覚えろ」という。

馬鹿な。そんなに甘いもんじゃないだろう。



さらにカンニングの仕方を教えてくれるのである。

「大事なことは机に書いて試験用紙で隠せ」等、うるさいことを言う。

私はあっけにとられた。カンニングなどというものをやったことがないのである。

こいつらまじめな振りして、なかなかしたたかだ。

それに、このうれしそうな様子はなんだろう。

まあ、分かるけどね。



私には、もう弾がないのである。

いろいろ教えてくれたにもかかわらず、無視した。

ただ残念だったのは、同じ問題が出たことである。



先ほど見た答えの残像が残っているものだけ書いたが、ほとんど白紙に近い状態で提出した。



追試の始まる前に、「試験だけは受けれよな」と云っていた教授だけは合格にしてくれた。

もう一人の助教授は、追追試になった。



もちろん友人は合格した。



さて追追試である。

今度は答えを覚えて行った。

助教授の部屋でテストをした。

お茶を出してくれ、「これで駄目だったら、レポートにしような」といわれた。

心に沁みるいい言葉だ。

ようやく私というものを理解してくれた。

ちょっと遅いけど、まあいい。

もちろん、同じ問題だったので、覚えたことを書いて合格した。



駄目学生の大学最後の試験でした。

gtkaudio at 03:06│Comments(0)友人列伝 

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